
- 物流市場は2025年は1兆3800億ドル、2030年までに1兆6700億ドルへと、5年間で年平均3.84%の成長率が予想される
- 物流管理プラットフォームを展開するGenLogsは、路上に設置したセンサーからトラックや運送会社を特定する
- GenLogsは年間500万台以上のトラックをリアルタイムで追跡、物流効率化とセキュリティの強化に貢献する
はじめに

画像引用元:corlettexpress.com公式ホームページ
物流はあらゆる産業の生命線の役割を果たす重要市場です。アメリカにおける市場規模は、2025年時点で1兆3800億ドル(約206兆6000億円)、2030年までに1兆6700億ドル(約249兆9700億円)と、5年間で年平均3.84%での成長が見込まれています(Modor Intelligence 2025)。近年の労働力不足や二酸化炭素排出量削減、サプライチェーンのリスク管理といった課題に直面し、重要性を増しているのが、物流管理分野です。
まず米国の物流業界の特徴は、輸送、保管、荷役、包装、流通加工などの機能に分化していること、そして小規模事業者に分散化していることにあります。それゆえ、物流において運用を効率化させるためには、企業間連携が非常に重要となります。しかし個々の企業が持つデータの共有化・透明化は、長期的には物流業界全体の効率化に資するものではあっても、個社の短期的な利益に直結するものではなく、企業間連携は進んできませんでした。
そこで今回ご紹介するのは、アメリカのスタートアップGenLogs(ジェンログス)です。GenLogsはそのユニークなアプローチで輸送効率の最適化から詐欺対策まで、物流管理の根本的な変革を推進しています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
GenLogsとは?
GenLogsは、アメリカ・バージニア州発のスタートアップとして2023年に創業されました。センサーネットワークとAIを駆使した物流管理プラットフォームで業界の課題解決に挑んでいます。
2025年2月にシリーズAで1460万ドルの資金調達を完了。累計調達額を2410万ドルとしました。同ラウンドを率いたのは米国のロックフェラー家にルーツを持つVenrockと ニューヨーク州に拠点を置きグローバル投資を展開するHOF Capital。その他にに、シードラウンドから引き続きニューヨーク州の工業・エネルギー・物流特化VC、Steel Atlasとカリフォルニア州のサプライチェーン関連特化VC、AutoTech Venturesが参画。その他にサプライチェーン関連投資を展開するVenture 53、ウィスコンシン州のTitletownTech、カリフォルニア州にて創業し世界的に支社を持つPlug and Play、オハイオ州のHeartland Venturesが参画しています。
Genlogsの物流管理プラットフォームの特徴は、これまで個々の企業に分散していた個別のトラックの情報を、全米の高速道路に設置されたセンサーネットワークを統合して収集していることです。同社は5分ごとに5万枚以上のトラックの写真を収集しており、商用車の運送会社を示すMC番号、個別車両に付与されるUSDOT番号、およびVINs番号と呼ばれる車両識別番号、ナンバープレート、ロゴ、搭載機器、位置情報などを分析します。なお同社は高速道路上の広告スペースなどに同社で設置したセンサーを活用していますが、どのように網羅性を高めているのかについては情報を提供していません。
これを過去2年間に蓄積された数十億枚の記録とともにAIが学習、分析することで、トラックの位置情報、積荷の内容、出発地と目的地に関するインサイトを提供します。顧客である荷主や運送業者に対して、最適なマッチングを実現するほか、トラックの盗難や、トラックの移動経路の最適化などに活用することができます。なおエンドユーザー向けのSaaS製品は2024年7月に発表されています。
テロ対策手法を応用した貨物追跡システム

画像引用元:GenLogs公式ホームページ
GenLogsの技術の核心は、元NSA(米国国家安全保障局)技術者チームが開発した画像認識アルゴリズムを中核に据えた監視システムにあります。この技術は元々、中東でのIED(簡易爆発装置)運搬車両検出用に開発されたものを物流向けに転用したものです。
米国運輸省の連邦自動車運送安全局(Federal Motor Carrier Safety Administration; FMCSA)のシステムでも、同様にトラックおよびその運送会社の特定システムの開発が進んでいますが、GenLogsはその検知精度において高い性能を誇ります。
FMCSAにおいて1年間に特定された運送会社が136,836社であったのに対し、GenLogsはその約2倍の264,743社を特定、トラックについてはFMCSAがのべ367,920台の車両を特定したのに対し、GenLogsはその100倍以上にあたるのべ5億台以上を特定しています。これによりGenLogsのシステムは過去4ヶ月の間に、400台以上の盗難車両の発見に役立てられています。
GenLogsのパートナーシップ

画像引用元:Greenscreens公式ホームページ
GenLogsは2024年12月に、トラックの盗難・不正利用防止プラットフォームを展開するCarrier Assureとセキュリティ強化のためのパートナーシップを発表。2025年2月には、トラック予約・管理サービスを提供するHighway、内陸水運や陸上輸送を手がけるTrailer Bridge、貨物輸送のダイナミック・プライシングプラットフォームを運営するGreenscreensとの提携を次々と発表しています。
まとめ

画像引用元:GenLogs公式ホームページ
いかがでしたか?今回は全米の高速道路上に設置されたセンサーから得られた画像をAIが分析し、トラック、運送会社、積荷を特定するGenLogsをご紹介しました。
これまで個々の企業に分散されていたトラックの情報を収集するためには、個別のトラックにデバイスをとりつけ、かつ情報を一元化する仕組みが必要とされていたところ、高速道路上にデータポイントを設置し、これを収集することにより、膨大で細分化された個別の事業者との接点なしにデータを取得できるようになったことは、まさにゲームチェンジングな発想といえるでしょう。
GenLogsの今後の動向が注目されます。