住宅販売前特化リノベーションで急成長するCurbioの仕組み

海外事例

 

  • Curbioは独自のテクノロジーによって住宅改修のプロセスを合理化し、所有者が迅速かつ簡単に改修
  • Curbioは、リノベーション費用の支払時期を「住宅の販売時」とすることで所有者にやさしいビジネスモデルを提供

はじめに

多くの住宅所有者は、家を売るときその改修には多額のお金と時間がかかるとしてその作業をせずに販売します。しかし購入者の目線からすると、もちろん購入後修理なしにすぐ入居できる家に価値を感じるのは当然です。

修理の済んでいない住宅を購入しようとする方は少ないでしょう。その結果多くの家がその価値を落としてしまっているのです。そこに目を付けたCurbioの新しいビジネスモデルについて見ていきましょう。

販売前特化のリノベーションを提供するCurbioとは

Curbio(クルビオ)は2017年に設立したアメリカ・メリーランド州のリノベーション会社です。米国建設特化ファンドBRICK&MOTORS VENTURES等から、2019年8月にシリーズAで700万ドル(約7.5億円)を調達しました。

Curbioは、先述のように売り手が敬遠しがちな販売前の住宅の改修を専門としている会社で、クライアントに専属のプロジェクトマネージャーをつけて管理を一本化したり、ハイテク技術の導入によって見積もりからプロジェクト完了(販売)までの期間を短縮し、所有者の利益を上げるとともに販売業者の負担も軽減することを可能にしました。

アメリカにおける通常の住宅リノベーションのステップ

アメリカにおいては、家の所有者が住宅改修を行うときに必要なステップは一般的に以下のようになります。

①業者に申請
②業者が家に出向き、家の修理の必要性や費用を見積もり
③希望する材料の選択、材料会社への依頼
④配達業者とのスケジュール合わせ
⑤住宅販売業者あるいは下請け業者の手配
⑥自治体への許可の申請

これらのステップを各業者と行わなければならず、非常に手間がかかる作業といえます。

Curbioはプロジェクトマネージャーによる管理の一本化

上記のステップを簡易にするため、Curbioは各クライアントに専属のプロジェクトマネージャーをつけて、②~⑥のステップを全て管理することで住宅所有者の負担を軽減し、合理的な手続きのプロセスを実現しています。

リノベーションプロセスを合理化するCurbioの3つの強み

Curbioでは、AIやモバイルデバイスなどのテクノロジーをを導入することで以下のような技術を実現しています。

Curbioはプロジェクトマネージャーによる管理の一本化

アメリカの一部のエリアについては即日見積もりが可能になっています。

リアルタイムでのオンラインやり取り

コメントや写真、そして3Dビデオをリアルタイムで更新し、即時コミュニケーションできるようにすることで、担当者は何日に渡って家に通う必要がなくなり、手間と時間を省くことにつながります。

3D映像によるバーチャルウォークスルー

見積後に撮影した3D映像を参考に、Curbio側で3Dウォークスルーを用意します。3Dウォークスルーとは、3D映像から収集した空間データをモデリング化した後、それをスマートフォンやパソコンなどのデバイスで見ることで従来のパノラマ写真以上のリアルな空間体験をすることができるシステムです。それをチームで映像をレビューし、もっとも価値をもたらす改修を決定します。このミーティングへはインターネットを通してどこからでも簡単に参加することができます。

これらの手法によって、一般的に数か月はかかる、見積もりからプロジェクト完了までの期間を3~8週間にまで短縮することを可能にしました。Curbioは、テクノロジーを活用することで時間の短縮という点でリノベーション領域において施工ベンダーとしてリードする地位を獲得しています。

改修費用は住宅販売後払いも対応

家を売る前に修理する時、「まだ売れてないのに修理のお金を用意するのは家庭的にも厳しい、、」と思う方は多くいらっしゃると思います。

Curbioはそこに注目し、改修の費用の支払いを住宅販売改修後とすることを可能にしました。これによって住宅所有者は金銭的な負担を考えずに気軽に改修へ踏み出すことができるようになります。この点もほかの企業には見られない有効な施策と言えるでしょう。

個人向けだけでなく、買取再販などを行う事業者にとっても資金繰りはかなり重要になります。上記の施策の結果、センチュリー21やバークシャー・ハサウェイといった大手不動産もCurbioの取引先となっています。

日米のリノベーション事情の違い

日本とアメリカにおける市場規模の差の理由は、不動産事情にあります。新築の家を買い、一生住み続けるという感覚が強い日本に比べ、アメリカでは7年に1回引越しをすると言われています。また、上記のグラフを見てもわかるように、アメリカの住宅流通市場はその82%の割合を中古物件が占めています。国民の半数以上が築40年を超える物件に住んでいるという統計もあり、築年数が古い物件も資産価値が下がりにくい傾向にあります。これは、アメリカではDIY文化が根付いているため築年数を気にしないこと、不動産開発に厳しい制限があり、新築物件が極端に少ないことなどが理由に挙げられます。

日本におけるリノベーション市場の拡大とサービスの充実は

画像引用元:日刊工業新聞

日本でもリノベーションという概念や、中古物件を見直す動きは高まりつつあります。国土交通省による民間推計では、2020年の東京オリンピックを皮切りに新築着工戸数は徐々に落ち込み、2030年には70.5万戸まで減少する見込みとなっています。この数字は、1996年の164.3万戸の半数以下です。一方で、中古物件への関心は高まっています。施工の予算が低く済むという理由が多くを占めていますが、築年数よりも、建物内部における機能性や広さ、間取りなどを重視する流れになりつつあるのです。

現在日本で注目を集めているのはワンストップ型のリノベーションサービス。ワンストップ型では、物件探しとリノベーションの両方、さらには資金計画やローンの相談まで一貫して行うことが可能です。担当者が1人で済むため、依頼主にとって打ち合わせがしやすいという利点があります。

しかし、Curbioのような売り手の利益を上げるリノベーション会社はまだ日本国内では登場していない状況です。ただ、日本にもアメリカ同様のデバイスやネット環境は普及しているので、販売前の住宅改修の専門会社が現れてきてもおかしくないですし、需要は大いにあると思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?インターネットやモバイルデバイスなど、近年の技術の発達による情報伝達の効率化を利用して、リノベーションの課題であるコストも時間も短縮し、支払い期間までとことん消費者目線で問題解決に取り組んだことがCurbioの強みです。

ただ、その分事業における初期の企業側の負担が大きくなってしまうという点をいかに普遍的に解決できるかは少し考える余地はあるように思えますが、革新的な提案であることは間違いありません。

日本の同じような分野も含め、今後のリノベーション事業の動向にも注目です。