職住一体の居住施設「コリビング」に特化、賃貸プラットフォームを展開するHabyt

画像引用元:Habyt公式ホームページ
海外事例
  • 職住一体の居住施設「コリビング」賃貸市場が加熱。市場規模は2022年時点で132億8500万ドルのところ2028年までに638億1800万ドルへ、年平均29.9%で成長を見込む
  • ドイツ・ベルリン発Habyt(ハビト)は、「コリビング」に特化した賃貸プラットフォームを世界50都市にて展開
  • Habytは、2023年10月以降、韓国やドイツの賃貸企業とのパートナーシップにより、短期滞在市場への参入を加速

はじめに

画像引用元:Habyt公式ホームページ

「コリビング」とは、コワーキング(シェアオフィス)とシェアハウスを一体化した居住施設のこと。近年、ノマドワーカーやフリーランスなどの新しい働き方をする人々が増加する中で、プライベートな居住スペースを確保しつつ、オフィスの固定費を抑えたいという人々の間で「コリビング」が支持されつつあります。他方で近年では新型コロナ・パンデミックなどにより短期賃貸市場のリスクが顕在化し、Airbnb(エアビーアンドビー)などの短期(1か月以内)滞在向けサービスとは別の戦略で収益を安定化させたい、遊休不動産の賃貸オーナーに、この「コリビング」が受け入れられています。

「コリビング」の市場規模は、2022年時点で132億8500万ドルのところ2031年までに638億1800万ドルへ、年平均29.9%で成長を見込んでいます(注)。そのような「コリビング」賃貸市場において急成長しているのが、今回ご紹介するドイツのHabyt(ハビト)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

注)Global Research GURU “GLOBAL CO-LIVING MARKET PROFESSIONAL SURVEY BY TYPES, APPLICATIONS, AND PLAYERS, WITH REGIONAL GROWTH RATE ANALYSIS AND DEVELOPMENT SITUATION, FROM 2023 TO 2028

Habytとは

画像引用元:Habyt公式ホームページ

Habytは2017年にドイツのベルリンで創業された、「コリビング」に特化した賃貸プラットフォームを運営するスタートアップです。2023年10月にシリーズCで4000万ドル(約69億円)を調達し、累計調達額を6890万ユーロ(約118億円)としました。筆頭株主としてドイツのDeutsche Invest Capital Partners、フランスのKorelya Capitalが参画しており、その他にオランダのExor Ventures、イタリアのP101、スウェーデンのKinnevik、アメリカのEndeavor Catalyst、ドイツのVorwerk Venturesが名を連ねています。

Habytが提供する「コリビング」特化賃貸プラットフォームは現在、3大陸、35カ国、50都市、30,000物件を展開しています。サービス対応地域には、東京、ロサンゼルス、ニューヨーク、ベルリン、バルセロナ、シンガポール、香港などが含まれています。

2022年3月にイタリアのRoomie(ルーミー)を買収、2022年4月にシンガポールのHmlet(ハムレット)を買収、2023年1月には北米最大の賃貸企業Common(コモン)と吸収合併し、Habyt Groupを設立。2024年4月には韓国のSK D&D(エスケー・ディーアンドディー)との戦略的パートナーシップを締結し、韓国市場へと参入しました。2023年10月には自己資本での初のホテル経営に参入し、ベルリンにホテル・ウォーターフロントを設立しました。

日本では、2019年に三菱地所と共同で合弁会社Hmlet Japan(ハムレット・ジャパン)株式会社を設立。現在三菱地所は、Hmlet JapanとアメリカのBlueground Holdings Ltd.の2ブランドでコリビング事業を展開しており、グループ3社で2030年までに日本全国で1万室以上を展開する計画です。

デジタル化された賃貸管理ソリューション

画像引用元:Habyt公式ホームページ

Habytの躍進を支えるのは3500万人に達するといわれるデジタルノマドによる中期賃貸需要と、そうした需要の背景にある賃貸価格の高騰です。実際Habytの顧客の7割は、留学や仕事のために海外移住した人々です。Habytの賃貸プラットフォームは、借り手がローカルな契約手続きに悩むことなく、フレキシブルに中期の賃貸契約を結ぶことができるため、人気を博しているのです。

Habytのプラットフォーム(https://www.habyt.com/)は、Airbnbのようにプラットフォームから物件情報を閲覧し、内見から契約までを全てオンラインで完結することのできるサービスです。ペーパーレスに賃貸住宅を契約することができ、貸し手、借り手間のコミュニケーションもシームレス。多くの物件で、仲介手数料や敷金などがかからず、初期費用を抑えることができます。

新体験としての「コリビング」

画像引用元:Habyt公式ホームページ

「中期」(1~12か月)という絶妙な期間と、職住一体という利便性において、「コリビング」は新しい価値を提供しているといえます。そこで実際に一般の賃貸住宅と比較しても2~3割高い坪単価を設定している物件も多数あります。他方、利用者から見ると、高額の初期費用やシェアオフィスを別途借りることになった際の経済的負担の大きさと比較した際に、コリビングは経済的に優位な選択肢としてあります。

賃貸体験としての新しさも、「コリビング」の魅力の一つです。借り手はプライバシーが確保された、家具家電付きの部屋をいつでも契約して利用することが可能です。また部屋の外に出れば、同じ建物に入居する多種多様な人材とのコミュニティに参画することもできます。物件により、ジムやプールを併設している場合もあります。

まとめ

画像引用元:Habyt公式ホームページ

いかがでしたか?今回は2017年にドイツのベルリンで創業された、「コリビング」に特化した賃貸プラットフォームを運営するスタートアップHabytをご紹介しました。同社は「コリビング」事業者の吸収・合併を経て、3大陸、35カ国、50都市、30,000物件に展開するまでに成長。日本でも三菱地所傘下で事業を展開し、利用者の7割が外国籍であるといいます。デジタルノマド市場の盛り上がりあった新しい居住体験に注目が集まっています。