設計図面を実物大で投影?未建設物件の内覧を可能にするLifesize Plans

画像引用元:Lifesize Plans公式ホームページ
海外事例
  • 現実空間にデジタル情報を重ねるAR(拡張現実)技術を建設産業に応用する事例が増加
  • オーストラリアのLifesize Plansは、プロジェクトマッピングを応用して実物大のモデルルームを仮想的に構築するサービスを提供
  • Lifesize Plansはウェスタンシドニー空港のショッピングフロアやレストランフロアの設計に参画

はじめに

画像引用元:Jasoren.com “How Augmented Reality Is Used in the Construction Industry to Save Money and Speed Up Projects“

AR(Augmented Reality、拡張現実)とは、現実空間にデジタル情報を重ねることで仮想的に現実にないものを表現する技術のこと。新型コロナウイルス感染拡大による行動制限により、バーチャルな体験はより身近なものとなりましたが、近年は「オンライン内覧」など、AR技術が建設産業へと応用される事例が増えています。

今回ご紹介するLifesize Plans(ライフサイズ プランズ)は、AR技術の一つ、プロジェクトマッピングを応用して実物大のモデルルームを仮想的に構築することにより、住宅や商業物件の購入予定者が物件を仮想的に体験したり、建設設計図の修正をサポートするサービスを提供しています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

Lifesize Plansとは

Lifesize Plansは2016年にオーストラリアにて創業された企業で、プロジェクトマッピングを応用して建物の設計図を大型倉庫等の床面に投影し、実物大のフロアプランを仮想的に構築するサービスを提供しています。居住用と商業用を問わず、顧客や物件仲介人は投影された設計図に沿って家具の実物を配置するなどして仮想的に体験することで、建物の各フロアの設計が目的に適っているかを確認したり、建設計画の修正に役立てることができます。

2022年2月に、グローバル拡大戦略の一環としてシードラウンドで200万豪ドル(約1億8600万円)の資金調達を実施しました。このラウンドにおける主要投資家はオーストラリアに拠点を置くTWIYO Capital(トワイヨ キャピタル)で、資金調達後の企業評価額は約1000万豪ドル(9億3200万円)となっています。

また、同社は現在オーストラリア内外で地域の事業者に運営権を付与するフランチャイズによる事業展開を進めています。主に住宅販売事業者に向けてライセンス方式でLifesize Plansの技術を提供しており、住宅販売事業者は自社のショールーム等でLifesize Plansの設計図を投影する技術を販促に活用することができます。

設計図を実物大で表現するプロジェクションマッピング技術

画像引用元:Lifesize Plans公式instagram

Lifesize Plansのプロジェクションマッピング技術を支えるのは、施設内に設置された複数台のプロジェクターです。通常、倉庫天井に2台、四方の壁に4台、その他予備のプロジェクター数台が角に設置されています。

仕組みは至ってシンプルです。Lifesize Plansは建物の設計図のPDFを顧客から受け取ると、その設計図の縮尺に従って拡大して施設床面に投影します。実際に投影された設計図が実物大となっているかについて、メジャーを使って確認することで、正確さを担保しています。

Lifesize Plansのショールーム

Lifesize Plansのショールームでは、大型の倉庫施設の床面に建物の設計図が投影されます。顧客はこの投影図をもとに、以下の3つの体験をすることができます。

① 実際に設計図上を歩くことでフロアの設計上の問題点を確認

② 壁面に投影された動的画像から、完成予想イメージを視覚的に取得

③ 手持ちの端末のARにより、実際に歩きながら完成予想イメージを視覚的に取得

ウェスタンシドニー空港のデザイン事例

Lifesize Plansは2026年に開業が予定されるWestern Sydney Airport(ウェスタンシドニー空港)のショッピングフロアやレストランフロアの設計に参画しました。空港の床面積は膨大で、モデルルームをいくつも作ることは現実的ではありません。そこでLifesize Plansは各フロアを部分ごとに仮想的に構築し、一つのショールームで建設設計図を再現しています。

建設産業に応用されるAR技術

AR技術が建設産業に応用される事例は多数あります。例えば日本の大成建設は2021年、建設現場でプロジェクションマッピングを応用し、設計図面等を床面へ高精度に投影した原寸大図面から墨出しを行う技術「T-iDigital MARKING」を開発しました(注)。墨出しとは、設計図や施工図に示された寸法情報を建設現場に原寸大に書き出す作業のことで、かつては作業者がマニュアルで測量し、墨出しを行なっていました。この作業にプロジェクションマッピングを活用することで、測量の精度を改善し、さらに設計の変更等を迅速に反映することができるようになります。

また、Contech Magで過去に紹介しました、XYZ Reality(エックス ワイ ゼット リアリティ)は、AR技術を活用して建物の設計図における基準線を建設現場に仮想的に重ね合わせることで、施工者の作業を手助けするゴーグル型端末HoloSiteを提供しています。

まとめ

画像引用元:Lifesize Plans公式ホームページ”

いかがでしたか?今回は、プロジェクションマッピング技術を応用して床面に実物大の設計図を投影し、未建設物件の内覧を可能にするLifesize Plansをご紹介しました。同社は投影された設計図上で顧客に自由が歩き、家具を配置し、完成イメージを壁面や手持ち端末上で見て、現実と仮想空間を重ね合わせることで、より実物に近い形で物件を体験することを可能にしています。建設産業においてAR技術を活用したサービスが今後増加していくことが予想される中で、同社はどのように展開をしていくのでしょうか。今後の動向が注目されます。