BUILT ROBOTICSが実現する建設現場の自動化

海外事例

  • BUILT ROBOTICS(ビルト・ロボティクス)というスタートアップ企業が建設現場における重機運転の自動化を目指している。
  • 建機自動化に重要なのは座標プログラムと耐振性のある設計

はじめに

自動運転技術に注目が集まる昨今ですが、一般車だけではなく特定条件での自動運転の技術進歩が目まぐるしいです。サンフランシスコ発のBuilt Robotics(ビルト・ロボティクス)というベンチャーが、建設重機の自動運転によって、建設現場の自動化を目指しています。

建設現場の自動化を推進するBuilt Roboticsとは

2016年創業のまだまだ若いベンチャーであるBuilt Roboticsは、自動運転車に用いるセンサー技術を建設機械に応用するという、一見すると極めてシンプルな事業を展開しています。

創業者のNoah Ready-Campbellは、父親が請負業者として働いていたことを子供のころから見てきた原体験をもとに、Googleでのエンジニア経験、Twice(ebayに売却)設立などを経て、Built Roboticsを創業しています。

資金調達のステータスは未公開ですが、すでに1500万ドルの資金調達に成功していると言われています。

まずはこちらの映像をご覧ください。

重機が自動で動いて次々と施工の準備を整えていきます。しかも人を感知して動きを止めたり、変えたりと安全面での技術も伺えます。

また、Built Roboticsは、住友商事傘下の大手建機レンタル会社サンステートエクイップメントとアメリカにおける自動化建機レンタル事業についての提携も行っています。

建設機械の自動化を実現している高い技術

建設機械の自動運転と一口に言っても、それを成り立たせる技術はとても高度なものです。 重機を自動で運転を行うために主に2つの大きな技術を用いています。

①重機用の座標プログラムの作成

自動運転のためには敷地に即した座標の情報を与える必要があります。
建造物・土木工事用に特別に設計されたソフトウェアを用いてこれを実現しています。

Built Robotics geofence

②振動に耐えうる部品の設計

LIDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる、光を用いたリモート
センシング機器とGPSセンサーが必要になりますが、建設作業において掘削には大きな振動が伴います。

そこで振動に耐えられる特別な機器をそれぞれ設計することにより安全な自動運転を可能にしています。

またGPSセンサーは拡張GPSと呼ばれるセンチメートル単位までの位置データを生成する技術を用いており正確な動作を可能にしています。

Autodesk元CEOが出資するBuilt Robotics

Autodeskの元CEOであるバス氏は投資家であり、Built Roboticsに出資
するとともに理事会メンバーに名を連ねています。

Autodeskは建設業界でも標準的なCADソフトウェア、AutoCadを提供
しているベンダーです。また現在AutodeskはConTechスタートアップの買収元としても影響力が大きくなっております。

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そのCEOとして24年間建設業に携わったバス氏はBuilt Roboticsの重機への後付けのソフトウェアとしての技術、そして建設のステークホルダーの節約になるという点に感銘を受けたそうです。

この期待がBuilt Roboticsの将来性を物語っているかもしれません。

ロボットによる建設自動化の将来性

彼らが目指す建設の自動化はどれほど大きなインパクトをもたらすのでしょうか。自動が技術はは建築物だけでなく、インフラにも大きな影響をもたらします。

アメリカでは、トランプ大統領が一般教書演説で2018年に懸念を示した通りインフラの劣化が深刻な問題になっています。自動のロボットの誕生によりこうした問題が解決される可能性があります。

また建設業界では労働力不足が大きな問題になっています。調査によると請負業者の60%が熟練労働者の雇用に困っているということです。

ロボットによる作業の自動化により人間の仕事が奪われると言った側面も指摘されていますが、建設分野において結果として生まれる生産性の向上により業界が成長し、労働者を単純作業ではない新たな仕事に向かわせることができるでしょう。

建設業界では徐々にこうした自動運転技術が取り入れられています。代表的なところでは日本のコマツが2008年から、早くも自動運転重機の開発に着手しています。日本の建設機械メーカーのコマツによって作られた自動運転の大型トラックは、オーストラリアとチリですでに10億トンの資材を運んでいます。

コマツのように、建設重機を扱っていたメーカーからの自動化に加えて、BUILT ROBOTICSの事例のように、自動運転技術を持ったプレイヤーの参入によっても、こうした自動化は進められていきそうです。

また、ドラマ下町ロケットで登場した自動運転の農業トラクターのように農業分野での整備も進んでいます。

特定条件だけでなく、一般の自動運転においても、トヨタ自動車が、2020年に自動運転レベル4(エリアは限定であるものの運転の主体は人間ではなくシステムが行うレベル)の走行車を発表するとしています。

全業態で自動化技術というのは間違いなく発展していくことになるでしょう。

まとめ

Google、Teslaといった一般車の自動運転技術が注目されていますが、特定の領域での自動運転技術は条件を絞ることが可能なため、一般車にくらべて早く普及する可能性があります。

建設重機の自動化技術が進むことでコスト面や安全面でのより改善がされることでしょう。日本国内でもこのような自動重機が活躍する未来は近いのかもしれません。