- 建設物の美観や利便性を追求するミレニアム世代の登場により、デザインソリューションの需要が高まっている
- 中国のManycore(メニコア)は3Dインテリアデザインツール酷家乐(Kujiale)を展開
- ユーザーは短時間で実際のインテリアデザインに近い3Dモデルを作成することが可能
はじめに
建設産業において、プロジェクトの設計、計画、管理ソフトウェアの市場規模は年々拡大しています。2025年度の全世界のソフトウェア市場は売上ベースで、インテリアDDC(注1)にて199億ドル(約2兆6700億円)、建設用ソフトウェアにて409億ドル(約5兆4900億円)、AEC(注2)にて481億ドル(約6兆4600億円)に達すると予想されています(注3)。
背景には、居住空間や商業空間に対し、機能性や使い勝手だけでなく美観や品質を求めるミレニアム世代の登場があり、視覚化・共有しやすいデザインを柔軟に提供できるソリューションが求められているのです。
今回ご紹介する群核(Manycore、メニコア) は、建設物のインテリアデザインの3DモデリングSaaSを開発運営する会社で、業界初のNASDAQへのIPO申請を果たしています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
(注1)インテリアDDC(デザイン、デコレーション、コンストラクション)ソフトウェアはインテリア空間の設計、計画、視覚化、施工を支援するためのソフトウェアのこと。BIM、プロジェクト管理等の機能も含まれる。
(注2)AEC(アーキテクト、エンジニアリング、コンストラクション)ソフトウェアとは、建設物やインフラストラクチャのプロジェクトを設計、計画、管理に使用するソフトウェアのこと。CAD、BIM、プロジェクト管理等の機能も含まれる。DDCはAECの一種。
(注3)iResearch調べ、https://www.iresearch.com.cn/
Manycore Tech Incとは
群核(Manycore)は2013年に中国杭州市にて創業された企業です。インテリアデザインの3DモデリングSaaSを開発運営しており、中国国内向け製品、酷家乐(Kujiale、ク-ジャーレ)、世界市場向け製品Coohom(クーホーム)を展開しています。2021年にはアメリカ合衆国にてIPO申請し、2023年2月現在も株式公開に向けた準備を進めています。
主力製品の酷家乐(Kujiale)は、中国インテリア3D CAD市場において約10.3%のシェアを占めており、過去5年間に中国の新築住宅の90%以上の間取りをカバー、8000万以上に及ぶ大規模な3Dデザインモデルのライブラリーを有しています。酷家乐(Kujiale)の海外向け製品であるCoohomは200以上の国や地域のユーザーや顧客に提供されています。
酷家乐(Kujiale)の2021年第1四半期の月間平均アクティブユーザー数は約150万人で、主にデザイナーや企業ユーザーで構成されています。製品の無料版を誰でも利用可能とすることで大規模なユーザーベースを構築しており、有料の上位サブスクリプションへのアップセルの実績は2021年3月31日時点で前年比69%の伸び、顧客企業数は20,806社となっています。
インテリアデザイン3D CAD、酷家乐(Kujiale)
酷家乐(Kujiale)はインテリアデザインの3D CADを生成するクラウドベースのソフトウェアです。ユーザーはPCで間取りの検索、描画、改造、モデルのドラッグ&ドロップによって2Dで室内設計ができ、さらに3Dモデルへとレンダリングして視覚化することができます。
酷家乐(Kujiale)にはBIM、VR、AR、AI、クラウドレンダリングなどの技術が活用されており、10秒でエフェクト画像を生成し、5分でインテリアデザインを完成させることができます。
群核(Manycore)は8000万以上に及ぶ大規模な3Dデザインモデルのライブラリーを有しており、インテリアのデザインや家具の配置をリアルに表現することができます。以上画像の左側は酷家乐(kujiale)にて生成した3Dモデル、右側は酷家乐の3Dモデルをもとにインテリアの配置を行ったものです。極めて実景に近いモデルを生成することができることがわかります。
Manycoreのキーテクノロジー
Manycoreが持つキーテクノロジーは次の3点にあります。1つ目はクラウドネイティブの3Dグラフィックエンジンです。Windows、Mac OS、Android、iOSなどの異なるプラットフォームで動作し、3Dモデルを視覚化します。
2つ目は高速レンダリングで、CPUとGPUを両方使用して高品質の画像を生成し、同時にレンダリング時間を短縮します。Manycoreのレンダリングエンジンは、40,000平方フィートの仮想空間を一度に処理可能で、高度に最適化されたアルゴリズムと並行して稼働する多数のサーバー、独自のAIとデータ分析ツールにより、繰り返し行われる設計作業を自動化することが可能です。
3つ目は人工知能を活用したモデリング技術です。これにはフロアプラン分析、自動室内デザイン、環境理解エンジンなどが含まれます。APIシステムを採用し、SketchUpや3ds Maxなどの従来のソフトウェアとも互換性があり、様々なネットワーク、モバイルデバイス、およびオペレーティングシステムで動作します。
まとめ
いかがでしたか?今回はインテリアデザインの3D CAD及び施工主向け設計SaaSとして、中国国内向け製品の「酷家乐」や世界市場向け製品の「Coohom」を展開している群核(Manycore)をご紹介しました。
酷家乐(Kujiale)にはBIM、VR、AR、AI、クラウドレンダリングなどの技術が活用されており、ユーザーは短時間で極めて実際のインテリアデザインに近い3Dモデルを作成することができます。
群核(Manycore)は今後どのように事業を展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。