工事現場のコロナ対策とは?テクノロジーを駆使する建設会社Shawmutに迫る

画像引用元:Shawmut公式HP
海外事例
  • 現場で働く作業員たちは、新型コロナウイルスの脅威にさらされている
  • ShawmutはAIを駆使して、作業員たちの行動や体温を管理
  • withコロナの工事現場では、このような取り組みで作業員たちを守っていく必要がある

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大により、日本のみならず、世界中で生活が一変してしまいました。人と人との距離をとり、集団になることを避け、仕事もできる限りリモートに。こうしたコロナ渦においては、仕事の仕方も見直さなければならない業界が増えています。

そして、それは人と人が密に関わって作業をしてきた建設業界にも当てはまります。

今回は、コロナ渦の建設会社がどのような取り組みをしているのか、アメリカ、ボストンの「Shawmut(ショーマット)」を例に見ていきたいと思います。

建設業界の抱える“コロナ問題”

新型コロナウイルスは、工事の延期や中止など、建設業にも多くの影響を与えました。ですが、現実として工事を進めなければ仕事は無くなりますし、建物が出来なければその余波はあらゆる業界に響いていくことになります。中には、工期に迫られたことで、感染防止策を取っていると装って工事を続行してしまった例が、日本国内でもあります。
https://diamond.jp/articles/-/235948

このような問題に対して、アメリカの建設会社「Shawmut(ショーマット)」がとあるテクノロジープラットフォームを開発し、話題になっています。そこで今回は、Shawmutの取り組みから、今後の建設業の在り方について考えてみましょう。

Shawmutとは?

画像引用元:Shawmut公式HP  ShawmutCEO Les Hiscoe(レヒスコ氏)

「Shawmut(ショーマット)」とは、アメリカのボストンに拠点を置く建設会社です。学校や商業施設、住宅やスタジアムの建設など、年間約500のプロジェクトに参加し、幅広い実績を持つ彼ら。そんな同社は、2020年のコロナショックを受け、建築現場の安全性や今後の建設業界の在り方について深く考えたのだそうです。

そうして始まったのが、COVID-19安全計画と題された様々な取り組み。それは、ソフトウェアの開発や既存サービスの積極的な活用によって、コロナ禍を安全に、建設会社として生き残る道を模索するものです。

ShawmutのCEO、 Les Hiscoe(レヒスコ氏)は、「コロナウイルスは急速に世界、特に建設業界に抜本的な変化を要求しました」と語り、実際に自社にも厳格な安全ガイドラインを発令しました。

そして、それらのノウハウを元にして作られたのが「Shawmut Vitals(ショーマット バイタル)」です。

作業員の健康状態、接触を把握するShawmut Vitalsを開発

画像引用元:Shawmut公式HP

コロナウイルスの感染拡大防止策として、同社は労働組合や業界のピアグループと協力して、COVID-19の症状をチェック・接触の追跡ができるプラットフォームを開発。これが、「Shawmut Vitals(ショーマット バイタル)」です。

使い方は非常にシンプルです。現場で作業を開始する前に、作業員は専用のQRコードをスキャンします。そこから健康フォームに記入をし、健康診断を毎日自己認証することができます。

これによって企業側は、作業員の健康状態をリモートで把握することが可能に。感染が判明した人、疑わしい人が出た場合、接触した可能性がある他の作業員にも警告することができます。また、デバイス上で行うことで、作業員同士の接触を削減した、迅速かつ安全なシステムと言えます。

これ加えてShawmutは、2人の労働者が近づきすぎるとブザーを鳴らすウェアラブルテクノロジーの使用を試験的に導入。万全の体制で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めています。

“仮想安全管理者”!?SmartVidを導入!

画像引用元:https://www.smartvid.io/safety-monitoring

Shawmutは、COVID-19安全計画の一環として、他社のサービスも積極的に活用しています。その一つが、SmartVid社が提供する「Vinnie(ヴィニー)」。こちらは、AIによる映像解析によって現場やプロジェクトに潜むリスクを判断し、安全管理に役立てることができます。Vinnieは本来は作業員同士の衝突や物の落下など、物理的な安全管理を得意とする技術ですが、今回のコロナ禍においては、人と人の距離を管理する、フェイスマスクの着用の有無など、感染防止への応用への期待が高まっています。

また、状況が移り変わる工事現場において、24時間稼働できるAIが重宝されるのはいうまでもありません。常に最新のリスク状況を日次レポートで知らせてくれるVinnieは、コロナ対策だけでなく、安全管理に是非取り入れたい“仮想安全管理者”と言えるでしょう。

Shawmutは、Vinnieを使って現場の様子を把握。プロジェクトごとに、今後起こり得る潜在的なリスクを分析しています。これによって、平均して作業員が密集しがちなプロジェクトや作業工程などを一覧化。より安全な作業現場への改善に役立てることができます。

体温・接近をAIが管理!feevrを導入

画像引用元:https://feevr.tech/products/feevr

Shawmutが導入したもう一つのシステムがこちらの「feevr(フィーヴル)」。X.Labs社によって開発された人工知能(AI)ベースのシステムで、映像から個人を迅速に検出することができます。feevrを搭載した専用の携帯端末にサーマルカメラを取り付けることで、カメラに写った人間の体温を検出し、高温の場合警告を出すことも。体温が上昇した個人を効率的に特定できることは、ウイルスの蔓延を最小限に抑え、相互汚染を防ぐ効果が期待できます。

また、通常のサーマルデバイスと違う点は、AIによる顔認証があるということ。これによって、個人のデータを持ち合わせていれば、指標となる普段の平均体温から異常を検出することができます。つまり、体温の個人差を加味した上で、管理者はより正確な判断・指示を下すことが可能になりました。
このように、Shawmutは自社サービスのみならず、様々なテクノロジーを活用することで、より安全な作業現場の実現を目指しています。

“働きがいのある職場”に3年連続ノミネート

画像引用元:https://www.shawmut.com/news/shawmut-named-one-of-the-nation-s-best-workplaces-by-fortune-magazine-for-third-consecutive-year

Shawmutは今回のコロナ対策も含めて、社員の身の安全を重視した姿勢をとり続けてきました。その結果として、FORTUNE MAGAZINEの選ぶ、アメリカの「働きがいのある職場」に3年連続でノミネートしています。

同社の具体的な取り組みとしては、従業員持株制度(ESOP)などの特典、会社が支払う健康保険のオプション、大学の授業料の払い戻し、4週間のまとまった有給休暇の付与など、かなり手厚い補助の数々。これに対しては同社は、「このような取り決めは、従業員のエンゲージメント、生産性、および仕事の満足度を高めるための実証済みの方法であり、これらすべてが最終的に顧客体験を向上させるのに役立ちます。」とコメント。良い人材を獲得していく1番の方法は、大きなメリットを与えることだということを、彼らは知っているのです。

まとめ

画像引用元:Shawmut公式HP

コロナ禍でどう仕事をしていくか模索する建設会社Shawmutの取り組み、いかがでしたでしょうか。これは、リモート対応が難しい現場仕事に従事する方々を守っていく、先進的な例と言えるのではないでしょうか。今後も更に感染拡大が続いていきそうな新型コロナウイルス。こうした海外の事例を参考に、日本でもより安全な職場が実現されていくことを願います。