自律飛行ドローンで建設物のデジタルツインを作成するSiteAware

画像引用元:SiteaAware Ltd.,公式ホームページ
海外事例
  • 建設プロジェクトの進捗管理をデジタル化によって効率化していく概念にDigital Construction Verification(DCV)がある
  • イスラエルのスタートアップSiteAwareは、自律飛行ドローンによる建設現場の撮影、3Dモデル化、プロジェクトの進捗管理サービスをワンストップで提供
  • SiteAwareは日本の三井不動産傘下ファンドから資金調達を受け、鹿島建設などと協力して実証実験を実施

はじめに

画像引用元:SiteaAware Ltd.,公式ホームページ

建設プロジェクトの進捗管理には時間がかかります。従来、担当者が建設中の建物の内部を歩き回り、目で状況を確認したり、測量棒を立てて写真を撮影して記録を残すといったやり方が一般的ですが、こうした方法ではプロジェクトの全体像の把握には時間やコストがかかるだけでなく、人為的なミスによる作業の手戻りなど、プロジェクト全体の効率性を損なう可能性を排除できません。

そこで建設プロジェクトの進捗管理をデジタル化によって効率化していく「DCV」という概念があります。DCVとは、Digital Construction Verification(デジタル コンストラクション バリフィケーション)の略で、刻々と変化していく建設プロジェクトの実態を把握して管理するために、現場の施工状態と設計を3Dモデルで表現して比較するプロセスのことを指します。DCVは無駄な手戻り、スケジュールの遅れ、業務間の干渉を回避することにつながるため、多くの施工現場で活用されつつあります。

今回は建設プロジェクトのDCVサービスの一つとして、ドローンによる建設現場の空撮画像からプロジェクトの進捗管理をサポートするプラットフォームをワンストップで提供するSiteAware Systems Ltd.,(サイトアウェア システムズ、以下SiteAware)をご紹介します。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

ドローン撮影から建設プロジェクト進捗管理を支援するSiteAwareとは?

SiteAwareは2015年にイスラエルのテルアビブで創業されたスタートアップで、自律飛行ドローンによる空撮と建設プロジェクトの進捗管理を支援するサービス、SiteAware Digital Construction Verification(サイトアウェア デジタル コンストラクション バリフィケーション)を提供しています。創業時名称のDoronomy(ドロノミー)としても知られており、現在はイスラエルのテルアビブおよびアメリカのテキサス州ヒューストンの2都市にて事業を展開しています。

SiteAwareは2022年1月にシリーズBで1500万ドル(約19億9000万円)を調達し、合計調達額を2650万ドル(約35億1000万円)としました。本ラウンドはイスラエルを拠点とするVertex Ventures Israelを筆頭に、同じくイスラエルを拠点とするAxon VenturesとOryzn Capital、ハードウェア企業Boschの投資部門Robert Bosch Venture Capital GmbH、アメリカのベンチャーキャピタルThe Flying Object、同社のシードラウンドを主導したlool Venturesが参加しています。

SiteAwareが提供するDCVプラットフォームは、自律的なドローンの機体制御により建設中の建物の壁面に沿って飛行ルートの設定、撮影、3Dモデル作成、プロジェクトマネジメントのインサイト導出までをワンストップで対応するものです。撮影された画像から生成された3Dモデルは誤差1cm以内の精度となっており、SiteAwareが開発するAIが建設計画と比較することで建物の構造や外壁、設備を検証し、プロジェクトマネジメントのためのインサイトを生成します。同社は2021年に3倍の収益成長を遂げ、顧客は大手デベロッパーやゼネコンを含む40社以上に拡大しました。

建設計画をワンストップで管理するSiteAware Digital Construction Verification

画像引用元:SiteaAware Ltd.,公式ホームページ

SiteAwareのDCVサービスは次の4つの段階からなります。1つ目の段階は、設計図やすでに作成されているCAD、BIM、RFI、といったファイルを読み込み、設置が必要なすべての要素を現場で確認できるデータに変換します。

2つ目の段階は、作業現場をバックグラウンドでスキャンし、作業内容のデジタルツインを高速かつ正確に生成する段階です。この工程では自律飛行するドローンが建設物の空撮を行い、撮影された画像から作業現場の状況をデジタルツインとして生成します。このデジタルツインは、作業中に建設計画書と照合されます。

3つ目の段階は計画通りに進まない作業をハイライトして、実用的な洞察を提供する段階です。計画と異なる施工が行われている箇所や修理が必要な箇所を特定し、現場の担当者が効率的な施工計画の修正を行うことを手助けします。

4つ目の段階はこれらの作業状況からあらゆる要素に関してデジタル記録を作成し、ゼネコンやプロジェクトのオーナーのファイナンスに関する資料として提供する段階です。この段階で提供される資料から、ゼネコンやオーナーはより効果の高い投資計画やプロジェクトの資金計画を設定することが可能になります。

現場の施工や調達のマネジメントにも活用できる

画像引用元:SiteaAware Ltd.,公式ホームページ

SiteAwareのプロジェクトマネジメントプラットフォームは、現場の施工担当者や調達担当者が使用可能なように設計されています。例えばドローンで空撮された画像から得られたプロジェクト全体の進捗状況から、調達担当者は調達すべき部品をあらかじめ予測することができ、より効果的な調達計画を立てることができます。また、現場の施工担当者はこれをもとに効果的な施工計画を立てることも可能です。

SiteAwareのプラットフォームを活用するためには、担当者はドローンが飛行するタイミングを決定するだけでよく、あとはドローンが自律飛行して建設中の建物の画像を撮影。数時間後には建設プロジェクトの全体像と、AIが画像を解析して生成したインサイトを得ることができるのです。

【事例】三井不動産、鹿島建設と共同で自律飛行ドローンによる空撮の実証実験を実施

画像引用元:三井不動産「三井不動産、ドローン活用し建設現場の空撮と3Dモデル作成」

三井不動産とSiteAware(注)は2017年7月、日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区の建設現場にて、施工会社の鹿島建設株式会社ほかJVの協力のもと、SiteAwareが開発した自律飛行ドローン技術を使用した実証実験が行われました。本実証実験ではドローンによる空撮と3Dモデルの作成を行い、クラウド上で管理されたデータは工事の進捗管理や計測、関係者間の情報共有ツールとして活用されました。

三井不動産はこの実証実験の実績を活かし、都市開発事業におけるテクノロジーの活用について検討を進める予定です。またSiteAwareが日本国内でのサービス展開を進めるにあたって、三井不動産がサービスの活用法の検証や営業支援を行う予定です。

(注)当時社名はDronomy

まとめ

画像引用元:SiteaAware Ltd.,公式ホームページ

いかがでしたか?今回は自律飛行ドローンによる建設現場の撮影、3Dモデル化、プロジェクトの進捗管理サービスをワンストップで提供するイスラエルのスタートアップ、SiteAwareをご紹介しました。

SiteAwareのDCVプラットフォームは、自律的なドローンの機体制御により建設中の建物の壁面に沿って飛行ルートの設定、撮影、3Dモデル作成、プロジェクトマネジメントのインサイト導出までをワンストップで対応するもので、イスラエルにおけるドローン産業の技術力の高さとAIを用いたプロジェクトマネジメントプラットフォームという組み合わせに強みがあるといえるでしょう。

今後同社はどのように事業を展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。