
- 廃棄物管理産業は5,235億3000万ドル(約77兆4000億円)の巨大市場でありながら、最適化が進んでこなかった
- テクノロジーで廃棄物処理サービスを効率化するアメリカのSourgum Waste(Wayste Inc)は、2025年4月にシリーズAで1250万ドル(約18億5000万円)を調達
- Sourgum Waste(Wayste Inc)は地域の産業廃棄物業を革新するデータ駆動型プラットフォームを開発し、廃棄物処理業の効率化を進める
はじめに

画像引用元:Sourgum Waste公式ホームページ
廃棄物処理は、いまだ最適化が進んでいない領域の代表格です。廃棄量の調整や分別は極めて複雑な一方で、その大半が人的オペレーションに頼ってきたため、環境負荷のさらなる削減やテクノロジーによる効率化の余地が大きく残されています。リアルタイムデータの活用、AIによる最適化、そしてデジタルプラットフォームの導入により、廃棄物管理を他のビジネスプロセス同様に高度に自動化・効率化することが強く求められているのです。
実際、全世界の廃棄物処理市場はテクノロジー導入を追い風に、2025年には約5,235億3000万ドル(約77兆4000億円)規模に達し、2030年には約6,539億8000万ドル(約96兆7000億円)へと、年平均4.55%の成長が見込まれています(Modor Intelligence 2025)。
そこで本稿では、廃棄物処理DXのSaaSスタートアップSourgum Waste(Wayste Inc)を詳しく見ていきます。なお同社は顧客企業向けに「Sourgum Waste」、収集事業者向けに「Wayste」という二つのプラットフォームを提供しています。
Sourgum Waste(Wayste Inc)とは?

画像引用元:Wayste Inc公式ホームページ
Sourgum Waste(Wayste Inc)は2019年にアメリカ合衆国ニュージャージー州にて創業された、廃棄物処理のテクノロジー企業です。共同創業者のJoe DiNardi-Mack(ジョー ディナルディ=マック)氏は、4世代に渡る家族経営の廃棄物処理企業の出身です。
2025年4月2日にシリーズAで1,250万ドル(約18億5000万円)の資金調達を完了。このラウンドはスラックやトレロといったRPA(業務最適化)ツールへの投資実績のあるカリフォルニア州のSpark Capitalがリードし、マサチューセッツ州のSuffolk Technologies、Founder Collective、186 Ventures、ニューヨーク州のRiverPark Ventures、Broadway Venture Partners、およびインドのBD Investment Managementが参加しています。調達資金はAIアルゴリズムの高度化、プラットフォーム機能の拡張、サービス網の拡大に充てられる見込みです。
同社は産業廃棄物を排出する側向けの「Sourgum Waste」と、収集・運搬事業者向けの「Wayste」という二大プラットフォームを展開。主力サービスは定期収集(Recurring Services)と随時収集(Roll-Off Services)で、米国・カナダの5,000以上の都市で導入実績があります。2024年7月には、サービス提供エリアを従来の2倍に拡大し、既存のニュージャージー、ニューヨークなどに加え、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージア州へ新たに進出することを発表しました。
廃棄物排出事業者向けプラットフォーム「Sourgum Waste」

画像引用元:Wayste Inc公式ホームページ
複数拠点を持つ企業では、拠点ごとに異なる業者と契約するためコストや品質にばらつきが生じます。しかしSourgum Wasteでは、5,000社以上の産業廃棄業者をリスティングし、収集スケジュールやコンテナ容量などの要件をオンラインで入力すると、自動入札を実行。過去実績、地理情報、料金を総合評価し、最も効率的でコスト効果の高い業者を自動選定します。結果として平均20%のコスト削減を実現し、AIによる回収頻度自動最適化で人的調整を最大35%削減します。
料金は完全定額制で、定期収集は2~8ヤードのコンテナを月額契約とし、配達・回収・処理費用をすべて含みます。随時収集は10~40ヤードのロールオフ・ダンプスターを必要期間だけ手配し、同様にパッケージ提供。導入前には無料のWaste Auditで拠点ごとの廃棄量と運用フローを分析し、台数・頻度・提供エリアに応じた最適プランと見積りを提示します。さらにESGコンサルティングや環境報告書支援などのオプションも利用可能です。
廃棄物処理事業者向けプラットフォーム「Wayste」

画像引用元:Wayste Inc公式ホームページ
「Wayste」は収集業者向けのオールインワンSaaSで、配車管理、請求処理、顧客通知、レポート作成を一元化します。専用ドライバーアプリを使って作業実績やコンテナ稼働状況をリアルタイム報告し、GPS連携による資産トラッキングで現場状況をライブ可視化。AIによるルート最適化とドラッグ&ドロップ式スケジューラにより配車プラン作成と変更を自動化し、月間回収回数を最大35%削減しつつ運行コストを抑制します。
加えて、Sourgum Wasteとの連携により受注リードの獲得からスケジュール埋めまでシームレスにサポート。SaaS利用だけでなくSourgum経由の案件を高頻度で獲得できる仕組みを提供し、追加収益の創出を後押しします。
料金はドライバー数ベースの月額定額制で、Core(49ドル/ドライバー、最大5名)、Professional(99ドル/ドライバー、無制限)、Enterprise(要問合せのカスタム見積もり制)の三段階。全プランに配車管理、CRM、課金・決済、レポーティングを標準搭載し、上位プランではAI受注自動化やAPI連携、フランチャイズ向けダッシュボードなど大規模事業者向け機能を追加できます。
まとめ

画像引用元:Wayste Inc公式ホームページ
いかがでしたか?今回は、データ駆動型プラットフォームで廃棄物処理業界を革新するSourgum Waste(Wayste Inc)をご紹介しました。
排出事業者向けの「Sourgum Waste」と処理事業者向けの「Wayste」という二つのシステムは、複雑な廃棄物オペレーションを一元化し、コスト削減と業務効率化を同時に実現します。多拠点展開する小売・製造・物流業にとって最適なソリューションであるだけでなく、処理事業者にとってもマーケティングおよび顧客対応の負荷を大幅に軽減し、収益性向上をサポートします。
今後はAI予測精度のさらなる向上や海外展開、現地サポート体制の強化を通じて、廃棄物管理のサステナビリティを牽引していくでしょう。同社の今後の動向が注目されます。