インフラ事業の救世主!リスク管理&効率化をAIで実現する「Urbint」とは?

海外事例
  • インフラ事業はその重要度から、工事や電話対応などで常に大きなリスクを抱えている
  • UrbintはAIによってインフラ事業のリスク管理に特化したプラットフォームを開発
  • 同社は2020年6月に2000万ドルの資金調達に成功し、更なるAIの精度向上を掲げている

現場が逼迫するインフラ事業

ガスや水道、電気などのインフラは、今や我々の生活にはなくてはならない存在になりました。ですが、だからこそそれらを維持するための工事や顧客対応は緊急を要する場合も多く、作業員やオペレーターにかかる負担も相当なものになっています。

今回は、そうしたインフラの維持・管理において発生するリスクと、それらをAIによって解決を試みる企業「Urbint(アービント)」についてご紹介します。

インフラを支えるプラットフォーム「Urbint」とは?

画像引用元:https://urbint.com/

Urbint(アービント)は、2015年にCorey Capasso(コーリー・カパソ)氏によって設立された、ニューヨークのスタートアップです。同社はAIを駆使した安全管理プラットフォームを提供しており、2020年6月にはシリーズBのラウンドにおいて、Energy Impact PartnersやPIVAといった企業から2000万ドル(約21億円)の資金調達に成功しています。

同社の顧客にはNational Grid、Southern Company、Con Edison、Exelon、Dominion、NiSource、Xcel Energyなどの大手インフラ企業が名を連ねており、北アメリカで最大のガス会社トップ10のうち9つを含む40以上の企業とも提携しています。では、同社のサービスが何故インフラ企業に好まれるのか、その理由をみていきます。

「call 811」を補完!配管の損傷防止に

画像引用元:https://urbint.com/

地面を掘削する際に誤って地下を巡る配管に接触してしまい、パイプや掘削機が損傷してしまうことは少なくありません。そのため、アメリカでは「call 811」というシステムが導入されています。これは、事業者・土地の所有者に関わらず、少しでも地面を掘る作業をする際は州によって運営されている「811」に電話をかけ、事前に地下の調査依頼をするというものです。もし地下に配管などが確認された場合はペイントやフラグによってマークされ、掘削はそれを避けて行うことが奨励されているのです。

ただ、大きなインフラ企業では年間で200万件以上のマークを打つ事があるにも関わらず、それらのポイントをデータで管理し、残しておく術がこれまでありませんでした。そこで、Urbintの提供するサービスでは、この「811」によってマークされた位置をプラットフォーム上で一括管理を可能に。その上、AIがポイントごとに危険度をスコア化し、より安全な掘削プランの提案をします。これによって、事業者が掘削で損傷事故を起こす件数を大幅に下げ、作業効率を上昇させることにも成功しました。

画像引用元:https://urbint.com/

また、マークされたポイントをモバイルデバイスでも確認ができるアプリケーションも提供。オフィスの中、移動中のトラックの中など、場所を選ばずに社員全員で共有ができる点も、Urbintが支持される理由の一つです。

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天候や交通情報から危険を予測!リアルタイムでの安全管理を実現

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Urbintで管理するのは機械の安全だけではありません。従業員の就業履歴、スケジュール、勤務内容をAIに読み込ませることで、従業員に対するリスクスコアを作成。適切なプロジェクトに適切なタイミングで人員配置し、労働者の安全を確保します。これは、長時間労働を是正する側面と、現場ならではの身体的な事故を未然に防ぐ側面があります。これによって安全担当者は、Urbintの画面に可視化されたリスクスコアを見て、今どの現場に負荷がかかっているのか、どのような事故が考えられるのかをひと目で判断し、より正確な意思決定を行うことができるようになりました。

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また、職場内部のデータだけでなく、気象条件や交通情報、大気質といった外部データを取り込み、それを内部データと組み合わせることで、より現状に即したリスクを予測します。このような徹底した安全管理体勢が、インフラという重要極まりない事業を支える上で欠かせない存在として、多くの企業に受け入れられているのだといいます。

コールセンター稼働状況を予測し、シフトを提案

画像引用元:https://urbint.com/

インフラに携わっているのは、工事現場の作業員たちだけではありません。例えば、38,000マイル(約60,000km)にも渡るパイプラインと200万人の顧客をカバーする公益事業会社は、平均して毎日150件のガストラブルに関する緊急電話を受けています。彼らは限られたリソースを使用してこれらの呼び出しに応答し、いつ着信するかを見極めて人員配置をする必要があるのですが、それは非常に困難なことでした。

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Urbintを導入すると、AIを用いて通話量を予測・スコア化することが可能に。まずはオペレーターの1日の通話量を時間帯ごとに割り出し、時期や地域も考慮した統計からスケジュールを作成。それを元に、各企業の対応目標を達成するための推奨シフトの提案までを行います。企業はデータに基づいた人員配置をすることで、オペレーターの負担を軽減しながら、ユーザーの待機時間を短縮することも実現しています。

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図のようにUrbintは、当初のシフトに対してしきい値を超える通話量が予想されると事前に警告を出します。そして、シフト担当者が余裕のあるリソース計画を立てるためにも、こうした予測は早ければ早いほど役に立ちます。Urbintは現在、なんと最大で2週間後までの予測スケジュールを作成することができ、その正確性は85%以上。導入企業のシフト調整にかかるリソースは最小限に抑えられているといいます。

Urbintの今後

画像引用元:https://urbint.com/

同社のCEOであるCorey Capasso(コーリー・カパソ)氏は、Urbintの提供するサービスと従来の統計モデリングの差について次のように話しています。「リスクは毎日変化する可能性があります。ですが、従来の統計モデリングでは、データの更新はせいぜい年に1回。1年もあれば、現場を取り巻く環境はガラリと変わってしまいます。ただ、そこにAIが登場したことで、新しい脅威や変化する脅威に動的に適応できるようになりました。それはUrbintも同じことで、新しいデータを継続的に学習していくため、常に最新の状態を保つことができます。これは、現実のシナリオに対応する際の大きな利点と言えるでしょう」。

この言葉を裏付けるように、同社は感染症や病気の蔓延(米国でのCOVID-19の流行に対応するため)に関するデータなど、フィールドワーカーが直面する可能性のあるリスクに関する情報をリアルタイムで集約し続けています。それに加えて、同社は調達した2000万ドルという金額を使い、更にAIの精度を上げる開発を進めると明言。我々の生活になくてはならないインフラを、より効率的に支えていくであろう同社のサービスから目が離せません。