本記事は、ウェブメディアCommercial Construction & Renovationの記事「8 Construction Industry Trends to Watch in 2021」を許可を得て日本語訳したものです。
はじめに
2020年は、世界のあらゆる分野にとって間違いなく壊滅的な年でした。新型コロナウイルスの感染拡大による封鎖、検疫、社会的距離、そしてウイルスによる犠牲者は、想像を超えて人類を震撼させました。
建設業界も例外ではなく、2020年は最悪の状況に直面しましたが、2021年はそれを糧としたより良い変化が期待できます。暗い雰囲気の中でも、専門家やスペシャリストたちは、2021年を最高のものにするために、本格的に仕事を始めています。
以下に、2021年に注目すべき建設業界のトップ8のトレンドをまとめました。
グリーンリビングによるイノベーション
環境にやさしい建物というものは、以前はかなり贅沢なものでしたが、2021年にはより環境に配慮した建築物のトレンドが高まることが予想されます。実際、環境にやさしい建造物は住宅購入者にとって標準的になるかもしれません。
調査によると、建設業界は米国のエネルギー消費量の約40%、温室効果ガス排出量の約30%を占めています。2019年には、エネルギー市場で再生可能エネルギー資源が11%増加しました。これらのデータは、建設業界のエネルギー消費が世界的に大きな割合を占めていることを表しています。
これらの理由から、2021年には、環境に配慮した建設資材を使用し、二酸化炭素排出量の少ない建設計画がますます増えると予想されます。さらに、緑豊かな屋上や庭園は、より平和で落ち着いた効果をもたらし、居住者や通行人の心理的・肉体的な健康に有益となるでしょう。
よりスマートなコミュニケーション
パンデミックや都市の封鎖によって、人々はテクノロジーの有用性を実感しました。感染症予防のために人同士のコミュニケーションが限定されてしまう中、迅速な情報の伝達やビジネスの助けになったのがテクノロジーだったからです。
したがって2021年には、デジタルツールを活用したスマートなコミュニケーションの急増が見込まれます。もちろん、建設には多くの物理的な作業が必要ですが、それでも従業員は可能な限りデジタルな方法を使うでしょう。
特に建設業界で一般的に使用されていくであろうデジタルツールとして挙げられるのが、チームチャットアプリ、スタッフのスケジュール管理ソフト、オンライン管理といった分野です。また、企業がITスキルのある専門家を採用することが増えることも意味しています。
BIM&VDC設計技術
技術の進歩は、建築家にも大きな変化をもたらしました。BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)はCADに取って代わり、建物の設計と描画のプロセスを仮想世界に持ち込んでいます。建設業者にとっては、VDC(バーチャル・デザインコンストラクション)が建設プロセスを容易にし、財務管理ツールが潜在的な欠陥や問題を事前に特定し、コストと時間を節約するのに役立っています。
3Dプリントの使用
3Dプリントの概念は、2015~2016年にかけて広く一般的に知られるようになりました。そして今では、効率的な建設方法の一つとして大きく注目もされています。
3Dプリンターを用いて行われる建設は、従来の方法よりもはるかに迅速かつ正確です。というのも、3Dプリンターはデザインデータを直接物理的な形式に変換するため、より従来の建設よりすぐれた結果を得れます。
また、3Dプリンターを用いると必要最小限の資材で建物を作ることができるので、結果的に廃棄物の減少にも寄与することになります。3Dプリントは、その効率性と持続可能性を促進する性質から、今後のサステイナブルな時代に欠かせない工法になると期待されています。
上昇中のモジュラー構造
基本的にモジュラー構造とは、モジュールと呼ばれるいくつかのセクションを組み合わせて作るプレハブの建物を指します。そして、モジュールは工場などで製造され、ある程度完成した状態で現場に持ち込まれるため天気などの影響を受けづらく、プロジェクトが遅延するリスクが少ないなどのメリットが挙げられます。
この便利で革新的な建設様式は、主に3Dプリントや資源の節約など、近年のトレンドとも密接に関連しているため、日ごとに人気が高まっています。この最先端技術は労働力不足の解消にも効果が期待され、2025年までに業界価値が約1,088億ドルに上昇するという予想もあります。
サプライチェーンの変化
世界的なパンデミックによって、建設業界では従来のサプライチェーンを停止せざるをえない状況になってしまいました。そんな中、2020年を通して、請負業者とサプライヤーは損失を防ぎ、なんとか取引を生かす方法を模索していたのです。
多くの請負業者は、代わりのサプライヤーを見つけるか、材料の購入に平均市場価格の3倍を投資するといった手段を取りました。すると、一部のバイヤーは、天井ファンやエアコン、その他の機械の仕入れ値が3倍になってしまうという難局に陥ったのです。
したがって、建設業界は大きな損失を経験し、多くの人々が混乱する結果となってしまいました。
そのため2021年に期待されているのは、請負業者とサプライヤーが業界の規範に囚われず、テクノロジーを駆使した新たな取引の形を模索していくことです。こうした人々による試みが行われることで、2022年初頭までにはサプライチェーンの安定化が実現するでしょう。
オンサイトで、より多くのドローン
建設現場では、作業状況の監視目的でのドローン使用が増加していることが確認されています。これにより現場管理者は、進行中のプロジェクトのすべてが計画どおりに進んでいるか、変更や安全対策を実施する必要があるかを、リアルタイムでチェックし続けることができます。さらに、ドローンが現地にいることでリモートでの作業が可能になり、建設現場全体のパフォーマンスが向上しています。
職場での安全を優先する
建設業界のもう1つのトレンドは、安全規則の見直しと徹底です。従来の建設現場としてのリスクマネジメントに加えて、マスクや消毒液、手袋の使用をすべての従業員に義務付けるなど、パンデミックへの対応も進んでいます。
ですが、建設作業にチームワークは必要不可欠。パンデミック対策でメンバーがソーシャルディスタンスを取ったり、人数が減ったりすると、それはプロジェクトの完了に時間がかかることを指しています。
まとめ
2021年8月現在、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するように、次々とテクノロジーによる建設業界の改革が行っているのは間違いがありません。パンデミックの収束後も、この経験から得た成果が活かされ、建設業界全体の効率化を実現することに期待します。