循環型経済に貢献!リサイクル廃棄物を利用した無焼成レンガ建材のKenoteq

画像引用元:Scottish Financial Times “Clean-tech firm Kenoteq secures £1m of funding from Zero Waste Scotland”
海外事例
  • レンガの市場規模は2023年から2030年までに7,586億2,000万米ドル(約111兆2000万円)に達し、年平均4.8%で成長を見込む
  • イギリス・スコットランドのKenoteq(ケノテック)は、リサイクル原材料を利用した無焼成レンガ建材の製造技術を開発、製造工程における環境負荷を9割削減
  • 製造技術は特許取得済み。商用生産に向けた内外装向け建材性能・環境認証取得を進めている

はじめに

画像引用元:Kenoteq公式ホームページ

レンガは建設業界で広く使用されている主要な建材の一つです。その耐久性、断熱性、耐火性に優れた特性から、建物の壁、基礎、その他の構造物など、さまざまな用途に使用されています。全世界におけるレンガの市場規模は、2023年に5,460億7,000万米ドル(約80兆円)と推定され、2024年には5,715億7,000万米ドル(約83兆8000万円)に達する見込み、さらに、2030年には7,586億2,000万米ドル(約111兆2000万円)に達すると予測されており、2023年から2030年の間の年平均成長率(CAGR)は4.80%です(注1)。

しかし、レンガ製造における環境負荷の低減は重要な課題です。従来のレンガの焼成工程はエネルギーを大量に使い、炭素排出が多いことが問題となっています。これに対して、自動化やエネルギー効率の高い窯の導入など、技術革新が進められています。

そこで今回ご紹介するのは、リサイクル材料を用いたレンガ製造の新興企業として注目されている、イギリス・スコットランドのKenoteq(ケノテック)をご紹介します。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

注1)株式会社グローバルインフォメーション「レンガ市場:材料タイプ、規模、用途別-世界予測、2024~2030年

Kenoteqとは?

Kenoteqは、2019年にイギリス・スコットランドのヘリオット=ワット大学エジンバラ校からスピンアウトした企業で、リサイクル素材を活用した持続可能なレンガ建材の開発と製造を行っています。科学研究費として、2017年8月にスコットランド開発公社より50万ユーロを調達。2021年5月に環境NPOのZero Waste ScotlandCircular Economy Investment Fundより100万ユーロを調達し、合計調達額を150万ユーロとしました。非資金面においては、環境NPOのBuilt Environment-Smarter Transformation (旧Construction Scottland Innovation Center) 及びHeriot-Watt University、そしてリサイクル企業Hamilton Waste & Recyclingの技術協力や開発支援を受けています。

Kenoteqの主力製品K-BRIQ®(ケー・ブリック)は、原材料の9割をリサイクル廃棄物を利用し、圧縮成形することにより、製造過程におけるエネルギー使用量を9割削減しています。同製品はイギリスとアメリカで特許を取得し、欧州とカナダでは特許出願中。また、イギリス、アメリカ、欧州での製品認証を申請中です。

K-BRIQ®︎はこれまでに、BE-ST Circular Economy Award 2023Dezeen Award 2022VIBES Scottish Environmental Business Awards 2022Sacyr iChallenge Awards 2022、など多数の賞を受賞しています。また、2023年にUAEのドバイで開催されたCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)においてK-BRIQ®を展示しました。これはDubai Holdingの展示スペースにおいて、7000個のK-BRIQ®を使用した壁状のパビリオンを設置するもので、従来のレンガを使用する場合と比べて3トン以上の炭素排出を削減したとしました。

K-BRIQ®︎の製造工程

画像引用元:Kenoteq公式ホームページ

KenoteqのK-BRIQ®は建設および解体廃材をリサイクルすることで製造されます。これには、古いレンガ、石、モルタル、石膏ボードなどが含まれます。これらの原材料を粉砕処理し、特許取得済みの接着材料と混合します。この段階では、必要な割合で材料を調整し、リサイクル顔料を加えて製品に色を付けます。色は12種類が提供されています。

その後、混合した材料を圧縮成形します。このプロセスでは、従来のレンガ製造で必要とされる高温での焼成を行わず、圧縮技術を用いて成形します。この方法により、製造過程でのエネルギー消費が大幅に削減され、炭素排出も抑えられます。以下、製品の技術詳細です。

  • 圧縮強度: 29 N/mm²
  • 水分吸収率: <5%
  • 熱伝導率: 0.74 W/mK
  • サイズ: 205 x 102.5 x 65 mm
  • 重量: 2.4 kg(ソリッド)/ 2.2 kg(中空)

同社は現在流通業者や商社を通じての販売は行っていないとみられ、価格についての情報はありません。具体的な流通量は公開されていませんが、認証の完了や生産能力の拡大に伴い、今後市場での流通が増加していくことが期待されます。実際、Kenoteqはスコットランドのエディンバラにて、2023年よりK-BRIQ®の商業生産工場の稼働を開始しているとの情報があります。この工場は年間500万個のK-BRIQ®︎の製造能力を有しています(注2)。

また、K-BRIQ®︎のほか、K-SLIP®︎(ケー・スリップ)という製品も開発。薄型のタイルや化粧材としての用途に活用される予定です。

注2)Scottish Self-Build and Renovation, Kenoteq

商用生産に向けた性能・環境認証の取得を目指す

画像引用元:Kenoteq公式ホームページ

K-BRIQ®は英国での認証を進めており、今後製品の市場での信頼性と適用範囲が大幅に拡大することが期待されます。また、環境製品宣言(EPD)証明書の取得も進めており、この証明書は2024年末に利用可能になる予定です。EPDは、製品の環境影響を定量的に評価し、透明性を持って公表するものであり、持続可能な建築材料としての信頼性をさらに高めるものです。

Kenoteqの別製品であるK-SLIP™も、ファサード固定システムとともに認証プロセスを開始する予定です。認証されたシステム製品は2025年に利用可能になる見込みであり、これによりK-SLIP™の市場での適用範囲が広がることが期待されます。

最後に、Kenoteqはデザインガイドの提供も予定しており、これも2024年末に利用可能になる予定です。デザインガイドは、製品の適用方法や設計に関する詳細な情報を提供し、建築プロジェクトにおけるK-BRIQ®およびK-SLIP™の効果的な利用をサポートするものです。

まとめ

画像引用元:Kenoteq公式ホームページ

いかがでしたか?今回はリサイクル廃棄物を利用した無焼成レンガ建材を製造するKenoteqをご紹介しました。Kenoteqの主力製品であるK-BRIQ®︎は、現在製品の性能・環境認証を進めており、製品化の最終段階にあります。同社の今後の展開が注目されます。