大規模プロジェクトの入札・設計・購買業務をDXするCandid Intelligence

画像引用元:Candid Intelligence公式ホームページ
海外事例
  • プラントやデータセンター等の大型EPC(設計・調達・建設)プロジェクトでは、着工前の入札・設計・購買・調達フェーズが長期化し、数年単位での計画を要する
  • EPC市場は2025年の9354億ドルから2035年の1兆6280億ドルへと、年平均5.7%で成長が見込まれる
  • 米サンフランシスコ発のスタートアップCandid Intelligenceは、入札〜詳細設計〜購買・調達といった前工程を、社内向けAIエージェントで支援する「EPC向けAIエージェント基盤」を開発

はじめに

EPC(Engineering, Procurement and Construction:設計・調達・建設)とは、インフラ建設プロジェクトにおける一連のワークフローを指す言葉です。発電所、プロセスプラント、データセンター、半導体工場といった大型プロジェクトでは、技術仕様や規制要件、複数のサプライヤーとの調整が複雑に絡み合うため、ゼネコンやプラントエンジニアリング企業がEPC契約を通貫して担うケースが一般的になっています。

とりわけエネルギー・通信・交通といったインフラ事業においてEPC業務はますます存在感を増しており、全世界のEPC市場は2025年の9354億ドル(約146兆6000億円)から2035年の1兆6280億ドル(約255兆1000億円)へと、今後10年間で年平均5.7%で成長が予測されています(Business Research Insights 2025)。

しかし現場では、着工前の2年間近くを、入札対応・基本計画・FEED(Front End Engineering Design)・詳細設計・サプライヤー選定・見積比較といった前工程に費やすことも珍しくありません。このフェーズでの非効率は、エンジニアリング工数の浪費だけでなく、プロジェクトの着工遅延や機会損失として顕在化します。そこで今回ご紹介するのは、アメリカで大型建設プロジェクトの入札から調達までをDXするソリューションを開発しているCandid Intelligence(キャンディッドインテリジェンス)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

Candid Intelligenceとは?

https://www.candidintelligence.com/

Candid Intelligenceは米国に拠点を置くスタートアップで、プラントやデータセンターといった大型の建設プロジェクトにおける入札から調達までをDXするソリューションを展開しています。2025年9月中旬にシードラウンドにて約550万ドル(約8億6200万円)の調達を実施しました。筆頭株主にはQuiet Capitalが入り、またMIT(マサチューセッツ工科大学)のE14 FundLiquid 2 VenturesFlexcap Ventures、個人投資家で著名AI研究者のYann LeCunが名を連ねています。

同社の創業者兼CEOのHassan Azmat(ハサン・アズマット)氏は、アメリカ・カーネギーメロン大学のメカニカル・エンジニアリング修士課程の卒業生で、会計系ソリューションのApláを創業後、プロダクトをピボットした経緯があります。

想定顧客は、以下のような「長い前工程を抱える大型プロジェクト」を扱う企業・部門です。

  • EPC企業(総合エンジニアリング/ゼネコン)
  • データセンター建設会社、ハイパースケーラー系の設備投資部門
  • プロセスプラント建設企業(石油化学、ガス、バイオ、食品など)
  • 半導体工場やバイオ工場を扱うゼネコンの設備・プラント部門
  • 発注者側のオーナー企業(エネルギー事業者、通信事業者等)のプロジェクト部門
  • サプライチェーン・購買・調達部門

これらの組織では、PFD/P&ID、仕様書、基準類、過去プロジェクトの図面や見積書など、膨大な非構造データがサイロ化しやすく、担当者ごとの「属人的な読み込み」に依存しがちです。CandidはここにAIエージェントを組み込み、設計・調達に関する解釈や判断を支援することで、意思決定のスピードと品質を高めようとしています。

Candid Intelligenceのソリューション

画像引用元:Candid Intelligence公式Linkedin

データセンター、プロセスプラント、あるいは大規模インフラ案件では、発注から着工までに設計、仕様調整、サプライチェーン確保、部材選定、購買といった工程が複雑かつ長期化しがちです。これらのプロジェクトでは多くの専門工事、複数のサプライヤー、厳しい技術仕様、法規制・認証プロセスなどを統合する必要があり、従来の手作業・電子表計算ソフト・メール・PDFによるやり取り中心のワークフローでは時間とコストが発生します。そこでCandid Intelligenceはこうした「長期化・高コスト化」が発生しやすい前工程に注目し、AIを使ってプロセスを圧縮します。

具体的には、Candid Intelligenceが開発するソリューションは、まず入札段階から始まり、設計仕様や過去データ、購買履歴、サプライヤーデータをAIにより統合します。AIエージェントが設計仕様の解釈、部材選定、サプライヤーの候補抽出、調達スケジュールの立案、見積り比較などを実施し、それらをワークフロー化することで「何をいつ発注すべきか」「どこのサプライヤーが条件に合うか」「コストと納期のトレードオフはどう設計すべきか」といった判断を効率化します。

プロダクトの成熟度と今後の展開


なお、Candid Intelligenceは現在、プロダクトの中核となるAIエージェントの開発と、EPC企業や大型プロジェクト向けのワークフロー実装を加速させている段階にあります。同社はこれまでの調達によって技術基盤の強化とプロトタイプの高度化を進めており、入札・設計・購買といった前工程における業務負荷を減らすための機能開発に重点を置いています。現時点では広範な商用展開や大規模導入事例は公表されておらず、限られたパートナー企業との間で技術検証や初期テストを行っているフェーズとみられます。

現時点でCandidは、プロダクトのコアとなるAIエージェント基盤とEPC向けワークフローの実装を加速させているフェーズにあります。公開情報ベースでは、具体的な事例として社名や定量的な成果を開示したケーススタディはまだ多くありませんが、エネルギー・プロセスプラント・データセンター関連のEPC企業とともに、PoCや初期導入を進めていることがうかがえます。

一方で、Podcastやインタビューでは、「現場のエンジニアが使いたくなるUI/ワークフローでなければ定着しない」、「図面やP&IDなど「人間でも読むのに時間がかかるデータ」をAIに読ませるための技術的ハードルが高い」、「「AIネイティブ」であることよりも、「AIに好奇心を持ち、現場課題に紐づけて試行錯誤できる組織文化」が重要」といった、ソフトウェア導入の難しさやAI実装の知見も語られています。単なる「AI搭載の新しいソフト」ではなく、EPC企業の業務・文化・人材育成の変革も含めて伴走するスタンスがうかがえます。

まとめ

画像引用元:TRC Companies公式ホームページ

いかがでしたか?今回は大型建設プロジェクトの入札から調達までをDXするソリューションを開発する、アメリカのCandid Intelligenceをご紹介しました。同社は現時点ではプロダクトの開発段階ですが、大型建設プロジェクトにおけるEPC業務のDXは今後より一層重要となり、設計・調達・見積りといった前工程の効率化は大きな競争力につながっていきます。今後の同社の展開が注目されます。