建設設計図からAIが自動で建材の必要量を算出・調達するBild AI

画像引用元:Bild AI公式ホームページ
海外事例
  • 建材調達をDXするソフトウェア市場は2023年の8億5130万ドルから、2032年の18億ドルへと、年平均にして8.5%で成長を見込む
  • アメリカのBild AIは図面や仕様書をアップロードすることで建材の必要量を算出しサプライヤーにつなげるソフトウェアを開発
  • 施工会社はBild AIを用いることで施工前の調達業務を効率化することができる

はじめに

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建材調達部門は、建設コストと品質を左右する重要な役割を担っています。納期や予算を計画に適合させるためには、資材価格の変動や納期リスクを管理する、効率的な調達体制が欠かせません。そこで近年の建設調達では電子入札や価格比較の自動化、在庫・物流の可視化など、DXが急速に進んでいます。これにより、コスト削減や意思決定の迅速化が実現し、環境配慮型素材の選定などESG対応にも貢献しています。建材調達DXソフトウェア市場は2023年の8億5130万ドルから、2032年の18億ドルへと、年平均にして8.5%で成長が見込まれています(Global Market Insight 2024)。

今回ご紹介するのは、建材調達をAIで効率化するアメリカのBild AI(ビルド・エーアイ)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

Bild AIとは?


Bild AIは、米国で2025年2月に創業したプレコンストラクション領域のAIスタートアップです。図面や仕様書をアップロードすると、AIが自動で内容を読み取り、必要な材料や部材の数量を算出。そのままサプライヤーとのやり取りに接続できるという、前工程を一続きのワークフローとしてSaaS化している点が特徴です。米国では集合住宅の建設需要が続く一方で、多能工やサブコンの人員不足が恒常化しており、職人や見積り担当が図面を見て一つずつ数量を拾っていく従来のやり方では、案件の数に人の数が追いつかなくなっています。Bildが狙っているのはまさにこの「図面を読んで数量とコストを出すまでの時間」をAIで短縮する領域です。

同社はY Combinatorに参画したのち、2025年7月に310万ドル(約4.8億円)のシード資金を調達しました。リード投資家はKhosla Venturesで、Mission Street Capital、個人投資家のRyan Sutton-Gee、Ooshma Gargなどが参加しています。創業者は元GoogleエンジニアのRoop Pal(ループ・パル)氏と、16歳から住宅建設を始めた起業家Puneet Sukhija(プニート・スキーヤ)氏です。スキーヤ氏は何百棟もの住宅プロジェクトを経験するなかで、図面に誤差がある、サプライヤーごとに見積り様式が違う、同じ図面を複数社が別々に読み直すという「無駄な繰り返し」が多いことを課題と考えました。またパル氏は、自動運転waymoの元エンジニアであり、図面読取技術の開発経験から、画像を構造的に読み取る技術を建設図面に応用して効率化する方向性を見出し、AIで図面の階層構造を解釈、部材・数量・位置情報を抽出するプロダクトに落とし込みました。

Bild AIのソリューション

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Bildのサービスの流れはおおむね次のようなものです。まず施工会社やサプライヤーがPDFやCAD由来の図面をアップロードします。AIが壁、扉、窓、間仕切り、仕上げといった図面上の要素を自動で認識し、各要素をどの建材や工種にひもづけるかを推定します。次に、それを材料データベースや過去の見積りデータと付き合わせて数量表と概算コストを生成します。ここまでがこれまで人手でやっていた「数量拾い」と「一次見積り」の部分です。

Bildはさらに、生成した数量と仕様をそのままサプライヤーに共有し、納期や代替材の提案、単価調整などのやり取りをオンラインで完結させます。図面から必要な材料の見積り、サプライチェーンへの接続を一つのSaaSで実行可能とするのです。

Bild AIのUX

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Bild AIが対応するのは「Division 8」(第8種)と呼ばれる、米国建設における原価分析用の標準分類であるCSI MasterFormat(CSI・マスターフォーマット)における開口部工種を指し、ドアや窓、フレーム、金物、シャッターなどを含むカテゴリです。集合住宅や商業建築では数百から数千に及ぶドア・窓が使われ、それぞれに防火性能、仕上げ、鍵の仕様、開閉方式など多様な条件が求められます。

Bild AIでは図面をアップロードするとAIが自動で開口部を検出し、数量と仕様を抽出して一覧化します。さらにサプライヤーの製品データと連携し、条件に合う製品候補を提示するため、見積りまでのプロセスを大幅に短縮できます。サプライヤー側も案件対応が早くなり、施工企業は前工程の準備時間を日単位から時間単位へと縮めることができます。

まとめ

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いかがでしたか?今回は建設調達をAIでDXするBild AIをご紹介しました。同社のソリューションは日本やアジアの建設産業にとっても示唆は大きいです。日本でも前工程の作図・数量拾い・実行予算づくりは人手依存が大きく、高齢化と人員不足でボトルネックになりやすい領域です。JIS記法や日本語図面、ハウスメーカー独自の図面テンプレートといったローカル仕様に対応できれば、そのままサプライヤーや商社が使えるかたちに落とし込めます。また、日本の建材流通は中間に商社や販売店が入ることが多いので、「図面をもらってから見積りを返すまでをオンラインで一気通貫にする」という価値は日本でも通用しやすい可能性があります。今後の同社の動向が注目されます