個性輝く3Dプリント建設! Branch Technologyが生み出す全く新しいデザイン

画像引用元:Branch Technology 公式ホームページ
海外事例
  • 価格の抑制や工期の短縮を可能にする3Dプリント技術は、建設市場で年々存在感を増している。
  • Branch Technologyは3Dプリントを用いて純粋に自由なデザインの実現を追求した建造物を建設している。
  • 同社は今後、商業施設の壁面など、実用的でありながらデザイン性を兼ね備えた建造物の建設を進めていく。

はじめに

ContechMagでは以前、iconXtreeEといった企業をご紹介しましたが、これらの企業のみならず、3Dプリント技術を用いて建設市場へ参入する企業が年々増加しています。

iconやXtreeEは、3Dプリント専用のモルタルによって外観を形成し、それ自体で建物を支える構造の住宅を提供しています。そのため、価格の低さや工期の短さに特徴がありました。しかし、製品の大きさやデザイン性を確保することができず、3Dプリント技術に特有の自由度の高いデザインの建設物の創造ができていませんでした。

今回ご紹介するBranch Technology(ブランチ テクノロジー)は、堅牢かつデザイン性が高い大規模建造物を3Dプリントで作り出すことに成功しています。それでは、早速見ていきましょう。

Branch Technologyとは?

Branch Technologyはより自由な発想で建造物を建設することを目指して2014年にアメリカ合衆国テネシー州で創業されました。同社の特徴は3Dプリンターを用いて建物の骨格や外観を成型し、これまでの素材では実現することができないようなデザインで建造物を設計することができるという点にあります。

2017年にはNASAの3D-Printed Habitat Challengeで第一位に輝くなど、その実力は様々な賞の受賞により裏付けられています。

Branch Technologyの作品

次の画像にある雲状のオブジェクトは、2018年にField Museum of Chicago(シカゴ自然史博物館)の125周年を記念し、同博物館の象徴であるセンターホールの改装とともにお披露目された空中に浮かぶプランターです。

画像引用元:Branch Technology 公式ホームページ

このオブジェクトは最大のもので、幅約10m、高さ約4.8m、重量は約8tです。すべての構造物の総重量は約13tですが、木材や鋼鉄などの従来の建築材料で建設する場合よりも重量が桁違いに小さく、博物館の天井で十分に支えられる重さだと言います。

画像引用元:Branch Technology 公式ホームページ

間近で見ると、格子状の構造物によって曲面が表現されていることが分かります。

続いての画像は、2016年にフロリダ州マイアミで開催されたDesign Miami Pavilions (マイアミで行われたデザイナーの作品展示会)にて展示された建造物です。

画像引用元:Branch Technology 公式ホームページ

Branch Technologyは積極的に社外のデザイナーや建築士と協力して様々な建造物を建設しています。この建造物は社外のデザイナーによってアワードで賞を獲得した建造物を、実物の設計に落とし込み、建設を実現させたものです。

画像引用元:Branch Technology 公式ホームページ

種々のCADソフトで設計された建造物の設計図はBranch Technology独自の技術により3Dプリンター向けの格子状構造の設計図へと機械翻訳され、プリンターでの出力が可能となります。
この建造物の場合、コンピューター上で建造物がその自重に耐えうるよう、負荷の分散を緻密に計算した上で構造が設計されています。

画像引用元:Branch Technology 公式ホームページ

C-Fab™が作る未来

Branch Technologyは建設にロボティクスと芸術を掛け合わせ、3Dプリンターを用いて格子状の構造を作成することで自由に建造物を創造する技術を開発しました。この技術はC-Fab™(シー ファブ)と呼ばれ、特許を取得しています。

画像引用元:ARCH20 “C-Fab | Branch Technology”

以下のように格子状の構造体を3Dプリンターを用いて工場内で製造したのち、現場で組み立てることで、自由な造形の建造物を作成することができます。

画像引用元:3D Print.com “Branch Technology 3D Prints Building Walls With World’s Largest Freeform 3D Printer – Launches 3D Printed Home Competition”

自由に建造物を設計できることは、建設の可能性を大きく広げます。
例えば以下の図のように、建物の外壁をその施設の用途や特徴に合わせてデザインすることで、建物の個性を引き出すことができるのです。

画像引用元:Branch Technology 公式フェイスブックページ

画像引用元:Branch Technology 公式フェイスブックページ

プレハブ住宅市場への参入

Branch Technologyは2017年末に、C-Fab™を用いたプレハブ住宅の製造プロジェクトを開始しました。

画像引用元:Arch Daily “The World’s First Freeform 3D-Printed House Enters Development Phase”

シカゴに本社を置く建築事務所WATGは、2016年にBranch Technologyが主催するデザインコンペで優勝しました。その際に公開された設計イメージが上図の住宅「カーブ・アピール」です。

画像引用元:ビジネスインサイダー “3Dプリンターで作る注文住宅、6カ月、30万ドルから”

このカーブアピールの外壁に、C-Fab™が応用されています。

これまでの3Dプリント住宅では素材を層状にプリントアウトしただけのものが建物の外壁となっているなど、その建設技術を高度化できず、デザインの自由度は限られていました。

しかし、Branch TechnologyではC-Fab™による創造的なデザインをそのままに、格子構造の間に泡状のコンクリートを詰めることによって、高い強度を誇る曲面を実現しました。

画像引用元:ビジネスインサイダー “3Dプリンターで作る注文住宅、6カ月、30万ドルから”

Branch Technologyによると、このモデルハウスの1平方メートルあたりの価格は3000~4000ドル(約33万円~44万円)で、通常の建設方法による場合の費用よりも低く抑えることができているといいます。2019年12月現在もプロジェクトは進行中で、各モジュールや部品のプリントアウトはすべて終了し、あとは現場での組み立て作業を残すのみとなっています。

まとめ

建設市場におけるBranch Technologyの挑戦はまだ始まったばかりです。しかし、未来的なデザインを実現する彼らの製品たちは何かワクワクさせるものを感じさせます。
これから建設市場でどのような製品を生み出し、我々を驚かせてくれるのでしょうか。Branch Technologyの今後の動向に注目です。