- 不動産テック企業 Compassにソフトバンク・ビジョン・ファンドを含む複数の投資企業が総額12億ドルを投資
- Compassのテクノロジーを活用し不動産仲介業務の生産性の向上を目指す
はじめに
アメリカにおける不動産テックCompass(コンパス) はソフトバンク・ビジョン・ファンドを中心とした投資家から累計で1200億円の投資を獲得している。Compass は2012年に設立され、わずか数年で評価額440億ドルとなる成長を遂げている。
なぜCompassの評価額が高額になるのか?アメリカの不動産ビジネスの背景やCompassが提供するテクノロジーについて解説します。
不動産仲介をテクノロジーで変える Compass とは
Compassは2012年に設立され、ニューヨークに本社を置くアメリカの不動産テクノロジー会社です。テクノロジーを活用して非効率が残る不動産取引に改革を目指しています。
創業者は、ゴールドマン・サックスでCOOをつとめ、財務補佐官としてホワイトハウスでも働いていた経験をもつロバート・レフキン(Robert Reffkin)と、創業した会社をGoogleやTwitterに売却経験のあるオリ・アロン(Ori Allon)と経験豊かなメンバーです。
同社は不動産エージェントの生産性向上を支援するソフトウェアを開発し、所属エージェントを増加させることで成長しており、創業わずか6年で成約金ベースで340億ドルへと増加し全米3位の取扱高に到達し、Compassへの手数料収入でも10億ドルを視野に入れている。
また、調達した潤沢な資金を活用し、ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC、ダラス、サンフランシスコなどの主要都市を含む20のアメリカ市場で主にラグジュアリー物件を中心に事業を展開するとともに、地域で力のある不動産仲介会社や不動産仲介会社向けCRMを提供するContactually などを買収しています。
Compassのコンセプトムービーは下記。
不動産テックスタートアップ Compassのビジネスモデル
Compassのビジネスモデルを解説する前に、アメリカの不動産取引の仕組みを解説します。
2重の仲介手数料が発生するアメリカの不動産取引
アメリカの不動産取引には「Agent(エージェント)」と呼ばれる営業と「Brokerage(ブロウカリッジ)」と呼ばれるエージェントを管理する仲介会社が存在します。
個人が不動産の売買をする場合に、必ずエージェントが入ります(親族間取引などは除く)。物件の売り手から仲介手数料5~6%が徴収され、売り手のエージェントと買い手のエージェントがそれぞれ半分ずつを受け取ります。
エージェントは自分の稼いだ仲介手数料のうち平均15%を管理者である仲介に支払います。
インターネットの普及前は情報の非対称性もあり、上記の手数料が普及していましたが、情報がノウハウがオープン化していくことで、
・売主からするとエージェントは5-6%の手数料の価値の働きをしているのか?
・エージェントに対して、仲介会社は15%分の価値を提供できているのか?
という疑問が多く上がってきています。
この2重の仲介構造に対して、現在多くのスタートアップが業務効率化をし価格を安くすることで、挑んでいます。
特に、仲介会社(Brokerage)の領域で手数料を下げることで急拡大しているのが、eXpとCompassです。
参考リンク
バーチャルオフィスを活用して急成長する不動産仲介会社「eXp Realty」のビジネスモデル
Compassは価格破壊でエージェントを一気に獲得
上記のように、アメリカの不動産売買市場は、エージェントが顧客を握っているため、いかに優良エージェントを獲得するかという戦略が重要になってきます。
Compassは高級不動産を中心に、力のあるエージェントに対して優遇施策を行って獲得をすすめています。
Compassがエージェントに提供する優遇施策
・仲介会社への手数料を0%にする
・現在の仲介会社からの移籍に移籍金を払う
・エージェントにストック・オプションを付与する
・テクノロジーを活用して生産性をあげる
・主要都市にエージェントが利用可能な豪華なオフィスを出店
上記のような優遇施策の結果、2018年時点で8000人以上のエージェントが所属しています。
結果、創業わずか6年で成約金ベースで340億ドルへと増加し全米3位の取扱高に到達し、Compassへの手数料収入でも10億ドルを視野に入れています。
この急成長はソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの多額の投資資金によって支えられています。
Compassが提供するテクノロジー
Compass が提供する様々なツール
( Collections / Insights / Marketing Center / Markets / CRM)
Compassは不動産版Pinterestともいえるポータルサイトを公開しており、サイトから物件を直接担当しているエージェントとやり取りできます。
また、エージェントが担当する優良物件をComing Soon物件として、他のポータルサイトより早く表示することで、不動産を探すユーザーの集客を図っています。
*アメリカでは「MLS(エムエルエス)」というオープン化された不動産データベースが存在し、基本的に不動産エージェントは扱う物件をこのデータベースに登録しているため、ポータルサイト間での物件差異が少ない
売却中物件の告知看板をデジタル化
日本でも不動産売買の立て看板がございますが、アメリカでも「For Sale Sing」という形で近隣への告知として看板が多用されています。
Compassではこの看板をデジタル化するという取り組みを行っております。看板にビーコンを埋め込み、アプリユーザーが通りかかればプッシュ通知をおくり、ユーザー以外にはQRコードを表示しウェブサイトへアクセス可能にしています。また夜間でもLEDライトで視認性を確保しています。
Compassと同様のモデルの日本のスタートアップは?
日本とアメリカでは、不動産取引の形態が異なりますが、ツクルバが運営する中古住宅売買プラットフォーム「カウカモ」が近しいモデルといえます。
株式会社ツクルバは、メルカリやアカツキといったスタートアップのオフィスデザインやコワーキングスペース「co-ba」の運営を行っていた企業で、2015年からリノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」に力をいれております。また、ユーザーの物件探しを支援するエージェント職種の採用も進めている。
まとめ
Compassは資金力とテクノロジーを活用して、アメリカの古い不動産売買市場を破壊していこうとしています。同企業は2020年までに20の主要な米国市場で20%の市場シェアを確保することを目標としている。
圧倒的なユーザー基盤と物件掲載を獲得しつつ、AIよって物件マッチングの効率化することを進めていくことが推測されます。また、アメリカ以外への展開も進めていくとの発言もあり、今後の動向が期待される。