- 建設現場ではドローン活用によるコスト削減・時間短縮が注目を集めている
- Skycatchは標定点(GCP)を必要としない測量法で大幅な効率化を実現
- 現在は日本の建設機械メーカーコマツと提携し、スマートコンストラクションを推進
はじめに
近年、建設および採掘現場では、ドローンによる空撮測量や現場の進捗状況管理、資材の運搬管理などが行われています。こうした現場の多くでは、作業の効率化や人員不足の解消やコストの削減に成功しており、作業現場でのドローンの活用は今、大きな注目を集めています。
今回ご紹介するSkycatch(スカイキャッチ)は、ドローンを利用した、地形測量や3Dマッピングテクノロジーサービスを提供している企業です。同社の強みは、独自のシステムによるスピーディーで正確な測量データの処理や、シンプルで直感性の高いソフトウェアにあります。
ドローン測量サービスSkycatchとは?
Skycatchは、2013年にアメリカのサンフランシスコで設立された会社です。現在同社は、ドローンを利用した空中からの測量・3Dマッピングテクノロジーを、世界20カ国以上の10,000を超える、建設および採掘現場に提供しています。
2018年にはドローンメーカーのDJI(ディージェーアイ)と提携して、日本の建設機械メーカーであるコマツに技術提供。スマートコンストラクション事業向けに発表した、自律飛行可能な高精度ドローン「EXPLORE1」や、RTKベースの小型ステーション「EDGE1」は大きな話題となりました。
また、同社は2015年のシリーズBラウンドにおいては、コマツ、Autodesk、MS&AD Ventures(三井住友海上、あいおいニッセイ同和の持株会社のVC)などから、2,200万ドル(約23億9300万円)の資金調達に成功しています。
それでは、こうして注目を集めるSkycatchが提供するサービスとは一体どのようなものなのか、早速見ていきましょう。
Skycatchのドローン測量の強み
1.導入ハードルの低い、優れた直感性
Skycatchが提供するドローン測量サービスの魅力の一つは、誰でも直感的に指先一つで操作できる、優れたUI/UXにあります。操作方法はとてもシンプルで、利用者が測量したい地点と高度を選択するだけで、自動でドローンが測量を開始してくれます。また、測量したデータは、「EDGE1」と呼ばれるベースステーションによって、約20分でデータ処理が施され、利用者への共有が可能となります。
2.スピーディーで精密な測量
Skycatchは、RTK(リアルタイムキネマティック)測量や、現場での高速データ処理ができるRTK-GNSSベースの小型ステーション「EDGE1」を活用することによって、スピーディーで誤差5cm未満の精密な測量を可能にしています。
・RTK測量
画像引用元:https://www.droneassemble.com
Skycatchが提供するドローン測量では、RTKと呼ばれる、標定点(GCP)を必要としない測量方法を採用しています。この測量法は、GPSやGNSSといった測位衛星からの電波を受信するだけではなく、地上に設置している同社製品「EDGE1」などの基準局から電波を送受信することによって、測位の精度を高める仕組みです。
RTKの採用によって、従来は1平方キロメートルあたり、最大40個必要であった、標定点の設置を不要としました。また、この測量法の採用によって、誤差5cm未満の精密な測量をSkycatchは可能としています。
・EDGE1
画像引用元:https://skycatch.com/
RTKベースの小型ステーション「EDGE1」は、RTK機能を備える、全てのDJI製ドローンと互換性があり、無線接続の状態や場所に関わらず、収集した画像を障害物を自動で除いた高精度な2Dマップや3Dモデル、分析レポートを自動で生成します。
また、生成されたデータは、組み込まれたWifiおよびLTE/5Gによってクラウドへ同期されます。従来であれば、1日を要することもあったこれらの作業ですが、「EDGE1」を使用することにより20分で完了することが可能になりました。
このようなドローン測量の実現によって、これまで手間と時間のかかっていた測量を簡単かつ高速に行うことができます。作業が効率化するとともに、人員削減などによるコスト削減も実現可能となります。
3.利便性に優れたソフトウェア
画像引用元:https://skycatch.com/
ドローンによって取得したデータは、Skycatch Data Hubと呼ばれる、クラウドベースのデータ分析パッケージによって管理することができます。同ソフトウェアを利用することによって、ユーザーはどこにいてもタブレットやPCを利用して、DTM・体積測定・等高線図・距離・勾配・面積などの分析結果の閲覧や、マークアップや進捗レポートへの記入をすることができます。
画像引用元:https://skycatch.com/
他にも同ソフトウェアでは、完成図や前日までのデータを現状の進捗データと照らし合わせることによって、施工した切土量や盛土量など、現場の進捗状況を確認することができます。もちろん、これらは施工ミスの早期発見にも役立たせることができ、大幅なコスト削減にも繋がります。
採掘現場でも広がるドローン活躍事例
画像引用元:https://skycatch.com/
従来の採掘現場ではレーザースキャナーによる測量が行われていましたが、レーザースキャンの活用には専門的な技術が必要であり、人材の育成に多くの投資が必要でした。その上、この方法での測量は手作業により行われる為、安全性や測量精度において問題がありました。
Skycatch独自のウォールスキャン技術
画像引用元:https://skycatch.com/
このような採掘現場の状況に対して、Skycatchが提供する独自のウォールスキャン技術が注目されています。同技術は、数値標高モデルファイルを使用して自動的に飛行経路とカメラアングルを調整する機能です。この機能により、複雑な地形においてもドローンが常に壁面から適切な距離とカメラアングルを維持し、精密なデータを取得することができます。
そのため、複雑な地形の採掘現場においても、誤差5cm以内の精密で高解像度の点群と3Dモデルを作成することを可能にしました。このような精密なドローン測量によって、現場管理者は無駄のない安全な採掘計画を立てることができます。
また、同社のRTK測量であれば頻繁に測量を行うことができるので、作業進行に伴う崩落の危険性をいち早く特定することにも役立てられます。
画像引用元:https://skycatch.com/
このような同社のドローン測量を採掘現場に組み込む事によって、従来の測量法に比べて測量にかかる作業時間を平均で60~75%短縮したというデータも。コストに関しては、1鉱山辺り年間30万ドル以上(約3,300万円)のコスト削減を実現しており、その効果の高さを伺い知ることができます。
コマツと共同で進めるスマートコンストラクション
2015年からSkycatchは、日本の建設機械メーカーコマツと提携し、スマートコンストラクションの実現のため、尽力してきました。スマートコンストラクションとは、建設現場のICT化によって人材不足解消や安全性、さらには生産性の向上も実現させる取り組みです。
画像引用元:https://home.komatsu/jp/
実はこのコマツのスマートコンストラクション実現に向けて制作したものこそが、先程もご紹介したRTKベースの小型ステーション「EDGE1」と、高精度ドローン「EXPLORE1」です。コマツでは、これらの機器を使用したサービス「Everyday Drone」を2021年現在も展開しています。
同サービスは、これまでにご紹介してきた、Skycatchのドローン測量システムを利用した施工管理サービスになっています。というのも、スマートコンストラクションにおいて、現場の状況を素早く分析することは最も重要な要素の1つ。Skycatchが提供する技術は、それらの要件を満たし、スマートコンストラクションを実現するために不可欠であったといえます。
コマツが展開するスマートコンストラクションにおいて「EDGE1」は、ドローンによる測量データの処理だけではなく、現場に設置された定点カメラの情報処理にも利用されます。「EDGE1」の活用によって、現場に出入りする運搬車の流れや、現場で働く作業員や建機の動きを解析し数値化することができます。これらのデータ解析により、建設現場における資材の運搬や現場管理を効率化することが可能になりました。
まとめ
今回はドローン測量で活躍する企業Skycatchを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
建設・採掘現場でのドローン活用は、業界全体で課題となっている、人員不足の解消や、コストの削減を実現する技術であると言えます。今回ご紹介したSkycatch以外にも以前当メディアでご紹介した、Propeller(プロペラー)などの多くの企業が建設現場でのドローン活用に乗り出しており、今後のさらなる技術発展が期待されています。