- Sonim Technologiesは作業現場用のスマートフォンを開発
- Sonim Technologiesが掲げるのは「超頑丈なモバイルソリューションを提供」すること
はじめに
2019年6月、Sonim Technologies(Link)はナスダックに上場しました。彼らは作業現場で必要とされる頑丈なスマートフォンを開発しています。建設業はもちろんのこと、アメリカではホテルや製造現場、警察でも使われているようです。通常のスマートフォンと何が違うのでしょうか。
この記事ではSonim Technologiesのスマートフォン事業を解説していきます。
Sonim Technologiesとは
Sonim Technologies(以下Sonim)は1999年にNaviSpin.comという名前で設立されました。2001年に現在の社名であるSonim Technologiesに社名を変更し、現在ではカリフォルニア州サンマテオの本社があり、北米を中心に展開しつつ、中国やインドでも事業にも拠点を置いています。また株主には米国で携帯機器大手のモトローラも連ねています。
極端なまでに耐久力!?作業現場に特化したスマートフォン
Sonimは作業現場に適したスマートフォンを製造・販売しています。スマートフォンの価格帯は399ドル〜799ドルほどで一般のスマートフォンとあまり変わりません。また使えるアプリもGmailやgoogle Mapなど私たちにも身近なものです。
では、Sonimのスマートフォンにはどのような特徴があるのでしょうか。大きく分けて以下の3つの特徴があるようです。
1. 頑丈かつ耐久性のある仕様
Sonimの製品はなんと軍用の規格で設計されています。そのため落下の衝撃や振動に強いものになっています。iPhoneなどではよく画面の破損などが話題になるだけに、こうした頑丈さは落下のリスクが大きい現場では嬉しい要素でしょう。また、完全防水で水深2メートルの環境で30分耐久できる他、-20℃から55℃まで対応できる様々な環境における耐久性、ほこりや微粒子からの保護性能、化学薬品に対する耐性や腐食性なども実装されています。
2. 作業現場でも使いやすい設計
作業現場は手袋での作業が多いのも特徴です。Sonimのスマートフォンは手袋をはめたままで操作可能な上に、濡れた手でも操作が可能な設計になっています。
また、シンプルで大きいボタンが特徴的で、直感的な操作を可能にしています。例えば通話はボタンワンタッチで行えるようになっており現場での緊急のコミュニケーションに対応します。
もう1つ大きな特徴として特殊な音響設計があります。工場や建設現場などでは環境音が大きく声が聞き取りづらいこともしばしばです。
Sonimには一般的にノイズが多い現場環境を想定して大きく以下の2つの機能を実装しています。
①Extremely Loud
Extremely Loud(極端にうるさい)の文字通り音量が現場用に大きくできます。
②Clear Audio
単語レベルで鮮明に聞き取れるように設計されています。
これらの特徴はスマートフォンの操作と現場での作業をシームレスに接続し現場での効率化に繋がっていることが想像できます。
3. 3年間の長期保証
作業現場という特性上、毎年買い換えるということは少ないため、Sonimは保証期間は3年間と長めに設定されています。保証期間中は素材や製造の欠陥に対し、無償での修理・交換を行っています。
幅広い産業のニーズに対応
Sonimがソリューションを提供する業種は以下のように多分野にわたっています。上場申請書に記載されている北米マーケットにおける対象となるユーザーは労働人口は4,690万人にも及びます。これもSonim躍進の理由の一つでしょう。特に建設業は880万人と製造業1450万人の次に大きなマーケットとなっています。
例えば、農業ではトラクターの操縦中に電話の声が聞き取れない、大量の水や農薬を使用するため、通常の端末では使えないという課題がありました。Sonimのスマートフォンはこうしたニーズに見事に対応しています。
Sonimが上場に至った売上成長
Sonimの躍進は財務状況からも如実に見て取れます。2017年には売上0.6億ドル、営業損失は-677万ドルでした。それが2018年には売上1.4億ドル、営業利益539万ドルに転じています。
2018年は2つの新モデルをリリースし、公安部門への営業を拡大するなど大幅な躍進を遂げました。販売が増加する中、売上原価や販管費が縮小、キャッシュフローは大幅に改善しました。
まとめ
作業現場用のスマートフォンという何の変哲も無いアイデアに思えますが、様々な業種の作業現場のニーズに応えられるようあらゆる性能が組み込むことで成長を続けています。
また、この事例からは、技術的に進んでいない業界に通底する課題、イノベーションの可能性が見て取れます。事業アイデアを考える上での一つのヒントになりそうです。