見落としがちな“メンテナンス”に着目。大手企業も注目のスタートアップUpKeepとは?

海外事例
  • メンテナンス作業員のためのサービスを開発し、39億円の資金調達をした。
  • モバイルアプリのサービスを利用することで、設備のメンテナンス業務を効率化できる。
  • ユニリーバやマクドナルドなどのグローバルカンパニーからも採用され、あらゆる分野から注目を集めている。

はじめに

建設現場において、設備のメンテナンス業務は非常に重要な業務の一つです。しかしながら、建設現場においては機材のメンテナンスを行う手段は、紙を媒体にしたものなどが多く、アナログな手法によって管理されている事例が散見されます。建設現場には非常に多くの設備や機材が存在するために、その一つ一つをアナログデータで管理することは非常に難しく、作業員同士のコミュニケーションなどに多くの時間を要してしまうなどの課題があげられます。

そうした課題を解決するための手段として、近年ではCMMS(シーエムエムエス、設備保全管理システムのこと)が注目されています。CMMSとは、建築物や船舶等の設備のメンテナンスのために必要な情報を電子化し、一元的に管理するシステムです。この技術によって、非常に煩雑でコストのかかるメンテナンス業務を効率化することが可能となることから、建設現場に限らず設備のメンテナンスを必要とする多くの分野から、CMMSは非常に注目を集めています。

今回は、多くの分野から注目を集めるCMMSに関して革新的なサービスを開発したアメリカの注目のスタートアップ企業、UpKeepをご紹介します。

UpKeepとは?

引用元:UpKepp 公式HP

UpKeep(アップキープ)は2014年にCEO Ryan Chan(ライアン・チャン)によってロサンゼルスで設立され、2019年においては売り上げ成長率300%以上、2500社以上もの顧客を抱える急成長中のスタートアップ企業です。2016年にあらゆる施設のメンテナンス業務を効率化することを可能するサービスUpKeepを開発し、先日のシリーズBにおいて3600万ドル(約39億円)もの資金調達を達成しています。調達を主導したのは、ニューヨークに拠点をおくインサイドパートナーズで、既存の出資元のEmergence CapitalやBattery Ventures、Yコンビネータ、Mucker Capital、Fundersclubからも新たな資金を調達しています。この調達により、累計の資金調達額は5000万ドル(約50億円)に達しています。
また、UpKeepのサービスはマクドナルドやユニリーバなどのグローバルカンパニーなどでも導入され、いま非常に注目を集めていることが伺えます。40万人を超える個人ユーザーと2500もの企業などの有料ユーザーを獲得しており、2018年から2019年で収益は3倍に、2020年では新型コロナウイルスの影響を受けてもなお、収益は横ばいと非常に業績は順調であると考えられます。

UpKeepのCEOであるChanがCMMSのサービスを開発したきっかけは、大学卒業後に浄水場で化学エンジニアとして勤務をしていた際の経験にあります。浄水場において様々な施設の機材でトラブルが発生していましたが、当時採用されていたメンテナンス用のソフトウェアを利用すると作業効率が非常に低下してしまった、とChanは話します。現場の作業員はデスクワークとは無縁の業務に従事しているにも関わらず、メンテンナンスのためのサービスはデスクトップベースのソフトウェアのサービスしか存在しないことに課題意識を持ち、Chanはモバイルベースのメンテナンスサービスを開発することを思い立ちます。そして2016年、ついにメンテナンス作業員向けのアプリUpKeepを完成させました。

見落とされていた「メンテナンス」に着目?そのサービスとは

施設のメンテンナンスに問題意識を持ち、Chanが完成させたUpKeepは、設備の修理が必要な機材をアプリ上で共有することによって、施設全体の修理状況を管理することを容易にします。例えば、メンテナンス作業員が補修を必要とする水道管などを発見した際に、UpKeepをインストールしたスマートフォンなどのモバイルデバイスで撮影することで、マネージャーは、水道管の修理が可能な作業員を現場に即座に派遣することが可能になります。Chanは、「このような方法であれば、あらゆるデバイスの状態を正確に把握することが可能で、修理のプロセスの管理を容易にすることが可能だ」と述べています。

導入事例やレビュー

引用元:UpKeep 公式HP

具体的な導入事例としては、世界各地でマリオットやリッツカールトンなどのブランドのホテル経営を手掛けるマリオットインターナショナルで事例があります。
マリオットでは、約30年以上もの間、紙面によるデータ管理や無線通信機によるコミュニケーションを中心としたメンテナンス業務を行ってきました。マリオットの経営陣はこうしたアナログデータは紛失してしまうリスクがあることや、非効率なコミュニケーションによってメンテナンス業務に必要以上の時間がかかってしまうことなどを課題視していました。こうした課題を解決することを試みるためにマリオットは、UpKeepの導入に踏み切りました。

UpKeepを導入したことで、水道管や空調機材などのホテル設備に問題が発生した際には、すぐにスマートフォンで写真を撮影し、UpKeepを通してリアルタイムでメンテナンスチーム全員に共有できるようになり、即座に必要な修繕を行えるようになったといいます。

結果として、コミュニケーションが円滑になったことで業務効率は非常に高まったことに加え、全ての作業員が良質な情報にアクセスできるようになったことから、現場における作業員のパフォーマンスの向上にもつながったとされます。

こうした事例はマリオットにとどまらず、多くの施設のメンテナンス業務において、業務効率化や設備に関するトラブル発生率の低下、メンテナンス担当者の人員削減などに繋がったなど、サービスを高く評価する声が多くよせられています。

まとめ

UpKeepは、見落とされがちな業務である設備のメンテナンス業務に着目し、メンテナンスに関わる作業員やマネージャーの業務を効率化することを実現しました。建設現場において、設備や機材などのメンテナンスは非常に煩雑であるために、こうしたテクノロジーによる業務効率化が期待されています。あらゆる暮らしのインフラを支えるために変革を続けるUpKeepに今後も注目です。