- 米国建機レンタル業界の市場規模は約3兆円で、今後も安定的な成長が見込まれている
- 1977年創業の建機レンタル会社Sunstate Equipmentは、2017年住友商事により100%子会社化された
- 同社は建機レンタル事業のICT化、自動運転建機の市場投入へ向けて準備を進めている
はじめに
建設現場では多種多様な建設機械が必要となります。以前は建設会社が建設機械を所有・管理することが一般的でしたが、日本においては1980年以降、景気悪化に伴う建設投資の減速により、建設機械の所有・管理が相対的にコスト増となりました。その結果、建機の新規購入は減少、レンタルによる調達が増加することとなり、現在日本の建機レンタル比率は約60%となっています。
日本では一足早く普及した建機レンタル事業ですが、米国でのレンタル普及率は2017年時点で40%程度に留まっています*。一方、米国の建設市場はインフラ老朽化による公共工事需要が下支えし今後も拡大していくことが予想されており、これに伴い建機レンタル市場も持続的な成長が見込まれています**。
そのような中、2017年に住友商事により100%子会社化された米国の建機レンタル企業Sunstate Equipment(サンステート エクイプメント、以下Sunstate)は、事業拡大を積極的に進め、2009年以降売上を3倍以上に伸ばしています。どのような取り組みを行なっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
*住友商事「グローバル事例 日本で学び世界へ。米国で展開される建機レンタル事業」
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/business/case/group/26999
**住友商事「米国建機レンタル事業Sunstate Equipmentの100パーセント子会社化について」
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2017/group/20170227_1
米国建機レンタルのSunstate Equipmentとは?
Sunstateは1977年米国アリゾナ州に創業された建設機械レンタル会社です。同社は米国南西部の10州にて建機レンタル事業を展開し、高所作業車をはじめとする多種多様な建設機械を取り扱っています。売上高は4億8300万ドル(約530億円、2016年度第3期)で、建機レンタル事業会社としては北米6位(建機台数)の規模を誇ります。
Sunstateは建機レンタル事業を中核事業として、その他に米国労働安全衛生基準(OSHA)や国家規格協会基準(ANSI)を満たしたフォークリフトや高所作業車の安全講習事業、中古建機の販売事業などを実施しています。
豊富な商品群と徹底した管理体制
Sunstateの強みは商品の豊富さと徹底した管理体制にあります。レンタル可能な建機は約800種類で、リフトや高所作業車、トラック等の車両型建機だけでなく、発電機や電灯等の据置き型建機、さらにはコンクリートカッターやエアコンプレッサー等の手持ちの建機についてもレンタルすることができます。
同社はレンタル建機の維持管理に定評があり、高品質の建機を提供している他、必要に応じて使用方法のトレーニングや建設プロジェクトの安全管理計画の策定まで実施しています。
また、レンタルの手続きはICT化しており、Webアプリまたはタブレットやスマートフォン向けアプリを通じて行うことができます。アプリでは、アカウントごとの建機のレンタル予約、履歴や支払い情報の確認ができ、さらにレンタルした建機の現場への輸送手配や故障時の連絡などを行うことも可能です。
緊急時には24時間365日対応の電話オペレーターが配置されており、アプリ上で解決できないトラブルにも人的なサポートを受けることができます。
またレンタル建機の整備は当然のこと、故障時のアフターサービスにも力を入れています。故障にはSunstate社内に配置された専門の技術者チームが対応しており、サブコンストラクターに業務委託しないことで、顧客のフィードバックをサービス改善につなげているといいます。
画像はトラック用タイヤを交換するための重機で、レンタル建機のタイヤがパンクした場合でも24時間365日修理対応ができるということです。
住友商事との共創的イノベーション
建設機械レンタルビジネスのノウハウ提供
住友商事は、日本国内において三井物産とともに、日本の建設機械レンタル上位の太陽建機レンタルに出資しており、1990年代から建機レンタルビジネスを提供。日本において建機レンタル比率は60%こえ、2020年市場規模も1兆円を超えてきています。また、住友商事は建機オークションを展開するスタートアップSORABITOに出資しています。
出典:経済産業省 特定サービス産業動態統計調査長期データ
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/result/result_1.html
レンタル建機輸送の効率化
2017年8月、住友商事は建機輸送のマッチングプラットフォームを運営するスタートアップ企業VeriTread(ベリトレッド、本社:米国フロリダ州)に出資を行なっています。同社は建機輸送を希望する荷主と配送業者をマッチングするサービスを提供しており、荷主は最も効率的な手段の輸送を選択することができるようになります。
Sunstateはレンタル建機の輸送に関して独自のノウハウを持っていましたが、住友商事関係会社のVeriTreadのマッチングプラッットフォームを活用し、さらに効率的な輸送を実現しています。その結果、業界最安の輸送料金でサービスを提供することが可能になりました。
自動運転建機のレンタル市場への投入
また2019年4月に住友商事は、Sunstateを通じて自動運転建機を開発するスタートアップ企業Built Robotics(ビルト ロボティクス、本社:米国カリフォルニア州)と、自動化建機レンタル事業に関する覚書を締結しました。
当メディアでも以前紹介しているBuilt Roboticsですが、実は2018年に住友商事傘下のファンドから出資を受け、既成の建機に後付けするだけで建機の自動運転化ができる製品を開発しています。その製品は、どのような建設現場にも安全に投入できるよう、作業員や障害物・車両を感知し、衝突を避けながら施工を実施できます。また緊急時には遠隔操作で停止する機能や、設定区域内のみを走行する技術が搭載されているといいます。
Sunstateは、Built Roboticsの自動化装置を取り付けた建機を2020年中を目処にレンタル商品として提供するサービスを開始する予定ということでした。同事業の続報が今後待たれます。
まとめ
いかがでしたか?Sunstateは創業以来ユーザーニーズに丁寧に耳を傾け、レンタル建機の豊富さや、徹底した管理体制を確立しています。建機のレンタルや輸送についてはICTを活用した効率化を実施しつつ、管理とアフターサービスには手厚く人材を配置することで、顧客に高品質なサービスを提供し、信頼を勝ち取っていました。
さらに住友商事のネットワークを通じた他社との協業により、輸送手段の効率化や、自動運転建機のレンタルなど、事業の効率化や多角化にも積極的に取り組んでいます。
今後どのように事業を展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。