- 建設用品・資材の小売業者によるEC市場への参入事例が増えている。
- 大規模小売業者は自社ECサービスの構築を進めている一方で、中小規模小売業者のEC参入は進んでいない。
- SuppyHogは建設用品・資材を扱う中小規模の小売業者のEC参入を支援するECプラットフォームを提供している。
はじめに
EC(イーシー、Electric Commerce)とは、直訳すると「電子商取引」のこと。インターネットを介して商品やサービスの売買を行うことを指します。
アメリカ合衆国では、同国最大の建設用品・資材の小売業者であるホームデポ(Home Depot)がECに参入。2020年度の売上高1310億ドル(約14兆4000億円)のうち約14.4%にあたる190.2億ドル(約2兆970億円)がECにより生み出されました。これは同社の2019年度のEC売上高と比較し、約86%の増加にあたるといいます。*
大規模小売業者にあたるホームデポ(Home Depot)やロウズ カンパニー(Lowe’s Companies)などの企業は、自社の商品を取り扱うためのECサービスを独自に構築しており、EC売上高を持続的に成長させることに成功しています。一方で建設用品・資材を扱うECサービスの競争は激化しており、自社でECサービスを構築できない中小規模小売業者は、EC参入が進んでいませんでした。
今回ご紹介するSupplyHog(サプライホッグ)は以上の問題を解決するために、建設用品・資材の販売業者と購入者をつなぐECプラットフォームを運営している会社です。どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
*Home Depot Annual Report 2020
SupplyHogとは?
SupplyHogは、個人や建設事業者が、建設用品や資材を購入するためのECプラットフォームを運営する企業で、2011年にアメリカ合衆国テネシー州で創業されました。ITベンチャーを中心に投資を行っている500 Startups(ファイブハンドレッド スタートアップス)などを筆頭株主に、2013年までにおよそ300万ドル(約3億3000万円)を調達しています。2017年には、建設業界へのIT活用を推進するAmerican Supply Holdingsにより買収されました。
SupplyHogのECプラットフォームは、地域で展開する建設用品・資材の小売業者と、地域でこれらの商品の購入を検討している消費者を、インターネット上でつなげる役割を果たします。インターネット上に「商品の売買ができる場所」を提供することを通じて、中小規模小売業者のEC参入を支援しているのです。
SupplyHogのECプラットフォーム
同社のクリエイティブディレクター、Kayla Brown(カイラ ブラウン)氏は、「SupplyHogの全社的な目標の一つは、全米の建設系小売業者のプロファイルを作成することである。」と述べています。
小売店がSupplyHogで商品を売買するためには、SupplyHogのサービスに登録する必要があります。小売店は登録が終わると、店舗で取り扱っている商品がECプラットフォーム上で検索できるよう、商品の名称や写真、使用方法、価格などを登録します。全米に点在する建設用品・資材の小売業者がSupplyHogのプラットフォームに登録することで、豊富な品揃えが実現しており、日曜大工から専門職までの幅広い客層に対応しています。
小売業者は消費者に商品をより届けやすくなり、消費者は、必要に応じて商品を購入できるようになるという利便性を提供しているのです。
建設用品・資材小売業の商習慣に合わせたサービス設計
ECプラットフォームの競合他社としてはAmazonが有名ですが、SupplyHogの強みは建設用品・資材小売業ならではの商習慣に合わせたサービス設計にあります。
例えば建設工具の場合、これから購入を検討している工具が用途に対して適切か否かや、使い勝手が良いかどうかは、実際に使ってみないと分かりません。そのためSupplyHogでは、購入から30日以内無料の返品交換を標準サービスとして提供しています。さらに、ウェブ上で購入したものを、店舗で受け取ることができるサービスも提供しており、受け取る前に商品を試用できることで、ニーズとのミスマッチを防いでいるのです。
https://vimeo.com/125274013
※参考動画
また、建設用品・資材小売業ならではの商習慣として、購入前に合計金額を提示する「見積もり」や、数量割や組み合わせ販売への値引き、得意客への値引きといった「値引き」の商習慣があります。
SupplyHogでは、消費者が購入したい商品をカートに入れると、小売店はこれらの商品に対する「見積もり」を作成することができます。小売店の裁量で柔軟に「値引き」できるだけでなく、例えば消費者から「連結用の金属部品を追加して欲しい」といったリクエストがあった場合でも、小売店側で商品情報をすぐに追加し、「見積もり」を作成することができるのです。作成が完了した「見積もり」はメールにて消費者に届き、消費者はメールに表示されたリンク先から購入を完了することができます。
日本における建設用品・資材のEC
日本においても、建設用品・資材を取り扱うECサービスは数多く存在します。例えば輸入建材や自社製品の販売を行うサンワカンパニーは1990年に自社のウェブで通信販売を開始しました。
同じくECサービスを運営するモノタロウ(株式会社MonotaRO)は、建設用品や事務用品などを中心に、現在1800万点の商品を取り扱っています。幅広い商品群と高い検索性能で利便性を高めつつ、積極的にデータを活用するマーケティング戦略により顧客を獲得しており、2019年度単年度の登録顧客数は72万人を超えるなど、持続的な成長を続けています。*
取り扱う商品の特殊性や商品点数など、企業によりそれぞれの強みを生かしたECサービスを構築しているのです。
*株式会社monotaRO(2020)「2020年12月期 第2四半期 決算発表」
まとめ
いかがでしたか?今回は、建設用品・資材のECプラットフォームを手掛けるSupplyHogをご紹介しました。SupplyHogは、建設用品・資材ならではの商習慣をプラットフォーム上でも実現できるようなサービス設計がなされており、全米の小売店に登録数を拡大していることで、豊富な品揃えを実現し、幅広い顧客層に対応していました。
同社の今後の展開が注目されます。