廃ペットボトルからアスファルトを生成!TechniSoilのエコな舗装技術とは

画像引用元:News Break "These Roads Are Rubbish, and That’s a Good Thing"
海外事例
  • アスファルト舗装道路は気温上昇や都市型洪水の原因となり、更に原料の環境負荷が高いことから、環境に優しい舗装材の開発が求められている
  • 自然土が原料の土系舗装は環境に優しいが耐久性に問題があり、交通量の多い道路では普及していない
  • TechniSoil Industrialは廃プラスチックからアスファルトを作る技術を開発し、耐久性と環境負荷のどちらにも配慮した道路舗装を行なっている

はじめに


都市交通に欠かせないアスファルト舗装ですが、アスファルト舗装が都市部の地面を覆ってしまうことで都市部の気温が上がってしまうヒートアイランド現象や、高い排水性のため河川に水が急速に流れ込み氾濫が発生する都市型洪水の原因となるなど、都市環境について様々な問題が指摘されています。またアスファルトは原油の精製過程で副産物として生産されることから、生産から使用するまでの過程で高い環境負荷が発生しています。

こうした問題を改善するため、アスファルトの再利用やアスファルトに代わる道路舗装材の開発が模索されているのです。

今回ご紹介するTechniSoil Industrial(テクニソイル インダストリアル、以下TechniSoil)は、自然土を利用した土系舗装の耐久性の高める技術や、廃棄されたペットボトルを原料とするプラスチック混合アスファルトの技術開発を進めている会社です。一体どのような製品を開発しているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

TechniSoil Industrialとは?

画像引用元:USAtoday “Drive the plastic highway? How a California company’s innovative repaving process could lead to the ‘holy grail’ of road construction.”

TechniSoilは、アメリカ合衆国カリフォルニア州に拠点を置く舗装技術開発の会社です。環境に優しい舗装技術が専門で、自然土を素材とする土系舗装材や、廃プラスチックを活用した改質アスファルト舗装材、そして使用済みアスファルト(RAP)を再利用する技術の開発を進めています。

以前まで高速道路や幹線道路など交通量の多い道路では耐久性に劣る土系舗装や使用済みアスファルト(RAP)舗装材の活用は進んでいませんでしたが、同社は原料を結合する硬化剤という材料に注目して、土や使用済みのアスファルト(RAP)などを原料としても高い耐久性を持つ舗装材を開発し、これらの問題を解決しました。

新技術 “TechniSoil G5”の実力

通常のアスファルトにG5などのプラスチック由来の硬化剤を混合させたものを、改質アスファルトと言います。耐摩耗性や耐久性、耐熱性に優れており、従来のアスファルトに比べて成形温度(軟化点)が低く、またクラッキング(ひび割れ)が起きにくいことが特徴です。原料には都市で発生したプラスチックゴミを活用でき、施工や修繕時のエネルギー消費も抑えられるため、環境負荷の低い材料として注目されています。

そして、TechniSoilが開発したアスファルト硬化剤がTechniSoil G5(以下G5)です。以下の画像は、通常のアスファルト舗装とG5を混合させた舗装の2種類の舗装の耐久テストの様子です。実験では約5cm幅のホイールに約70kgの圧力をかけ、25,000回往復させています。

画像引用元:TechniSoil Industrial LLC公式ホームページ
(アスファルト舗装材には深さ約10mmのホイール痕ができた)

画像引用元:TechniSoil Industrial LLC公式ホームページ
(G5混合アスファルト舗装材ではホイール痕の深さは約0.3mmに抑えられている)

従来のアスファルトでは深さ約10mmの溝が発生していますが、G5混合アスファルトでは溝の深さが0.3mmに抑えられており、耐久性が飛躍的に改善されていることが分かります。舗装材の重量に対してG5を4〜20%の割合で混合させることにより、耐用年数はなんと従来の2倍から3倍に伸びるといいます。TechniSoilはG5を活用して土系舗装やアスファルト舗装の耐久性を高めているのです。

アスファルトもペットボトルも同時にリサイクル!

画像引用元:Plastics Recycling update “How a company is turning PET into durable asphalt”

2020年7月、TechniSoilはカリフォルニア交通局と合同でカリフォルニア州の高速道路修繕の実験を行いました。

実験では4台の専用車を連結させ、まず地上から深さ約100mm前後までのアスファルトを掘り起こし、それら使用済みアスファルト(RAP)を粉砕します。その後約150,000本の廃ペットボトルを原料とするG5と混合させることでG5混合アスファルトを生成し、アスファルトを掘り起こした部分に流し込み硬化させることで、その場でアスファルトをリサイクルして修繕するというものです。

今回の舗装路修繕では、従来の舗装修繕に比べて原料のコストを大幅に抑制することができ、また道路の耐久性も高めることができたといいます。カリフォルニア交通局の責任者であるToks Omishakin(トクス オミシャキン)氏は、「持続可能性と環境保護の取り組みを推進しつつ、革新的で費用対効果の高い技術を採用するという交通局の部門の姿勢を示した。」と述べています。

今回整備されたのは約1000フィート(300m)ということでしたが、100%リサイクル素材を活用した道路の舗装は全米初だといいます。以下の動画からTechniSoilのアスファルトリサイクルの様子をご覧ください。

まとめ

いかがでしたか?今回は、プラスチックを原料とする硬化剤により舗装道路の耐久性を高め、また同時にアスファルトをリサイクルすることによって環境負荷の低い道路の舗装を実現するTechniSoilについてご紹介しました。

プラスチックを原料とする道路舗装はインドや欧州、東南アジアなどで技術開発が進んでいます。例えばインドでは、すでにプラスチック混合アスファルトが10万キロ以上敷設されており、ガーナのNELPLAST社は廃プラスチックを砂と混ぜてブロック状に加工し、道路に敷設するという技術を開発し、リサイクル率70%達成を目指しているといいます。

しかしこれらの道路舗装では、プラスチックを固形状態の骨材と呼ばれる原料として活用しており、道路のひび割れや欠けによってプラスチックが露出したり環境汚染につながる可能性があります。今回ご紹介したTechniSoilはプラスチックを粘性のある状態に加工し骨材を接合する硬化剤として利用しているため、上記のような環境汚染には繋がらないといいます。

同社の技術はどのように活用されていくのでしょうか。今後の動向が注目されます。