空調制御・配管・電気業に特化した建設調達管理ソリューションのBuildOps

画像引用元:BuildOps公式ホームページ
海外事例
  • 2018年アメリカ・カリフォルニア州で創業のBuildOps(ビルドオプス)は商業用空調制御・配管・電気などの専門工事業者向けに、建設調達管理をサポートするSaaS製品を展開
  • 見積・請求・スケジュールといった機能をAIが統合し、作業効率と利益率を向上
  • 同社は2025年3月にシリーズCで1億2710万ドルを調達

はじめに

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建設業界では、資材や労働力の調達をDXやAIで効率化する「建設調達管理ソリューション」の導入が進んでいます。建設調達管理ソリューション市場は2023年時点で8億5130万ドル(約1227億円)であるところ、2032年までに18億ドル(約2595億円)にまで、年平均約8.5%の成長が見込まれています(Global Market Insight 2024)。

主要プレイヤーとしては、ServiceTitan(サービスタイタン)Jobber(ジョバー)なども存在しますが、商業建築領域においては多様な業務を一気通貫で最適化できる製品は限られています。そこで今回は統合された建設調達管理ソリューションを展開するBuildOps(ビルドオプス)をご紹介します。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

BuildOpsとは?

BuildOpsは2018年に米カリフォルニア州サンタモニカで創業された、建設調達管理ソリューションを展開するユニコーン企業です。共同創業者としてCEOのAlok Chanani(アロック チャナニ氏、元米陸軍大尉、USA Commercial創業)、Steve Chew(スティーヴ チェウ氏、Microsoft出身)、Neeraj Mittal(ネラジ ミッタル氏、ServiceTitanの元エンジニア)が参加しています。

2021年にシリーズBで5,000万ドルを調達(主導はFika Venturesおよび01 Advisors)。その後2025年3月、シリーズCで1億2,710万ドルを調達し、時価総額は10億ドルのユニコーン企業となりました。同ラウンドはレイター向けVCのMeritech Capital Partnersがリードし、BOND Capital、Schneider Electric傘下のSE Venturesらが参加。既存投資家にはFika VenturesNext47StepStoneTitanium Ventures、元Twitter CEOのDick Costolo氏創業の01AFounders FundB CapitalMetaProp137 VenturesLiquid2などが含まれます。シリーズCまでの累計調達額は2億2580万ドルであり、最新の調達資金はパイプライン拡充やAI開発に活用される予定です。

BuildOpsが展開しているのは、商業用の空調制御、配管、電気、機械、消防設備などの専門工事業者向けに特化して、建設調達管理をサポートするSaaS製品です。顧客の代表例として、J.H. KellyService LogicHaynes MechanicalBaker Electricなどがあります。

BuildOpsの製品概要

画像引用元:BuildOps公式ホームページ

BuildOpsが提供するソリューションは、商業用空調制御、配管、電気設備、消防設備などを担う専門工事業者向けのクラウドSaaSです。見積・請求・現場管理・会計処理など、事業運営に必要な機能をひとつのプラットフォームで提供し、業務の統合と効率化を図ります。主な機能として以下のものがあげられます。

  • 自動スケジューリング(ディスパッチ):AIによるアルゴリズムが技術者のスキルセット、空き時間、現場ロケーションなどから最適な人員配置を導き、手動作業を大幅に低減します。
  • 予測メンテナンス:IoTやセンサーデータと機械学習を連携し、設備の故障や労働災害のリスクを事前に検知。ダウンタイム削減とコスト管理に貢献します。
  • リアルタイムトラッキング:モバイル端末で現場作業内容や位置情報をリアルタイムに更新。バックオフィスは進捗やコスト状況が即時に把握でき、課題発見・対処が迅速化します。
  • 見積・請求・会計連携:見積データを元に自動で請求書を生成し、QuickBooks(クイックブックス)など主要会計ソフトとの連携も可能。支払い遅れの抑制やキャッシュフロー改善に役立ちます。
  • アナリティクス/BI機能:工数、材料費、利益、顧客満足度といった指標をダッシュボードで可視化。リアルタイム分析により、事業全体の収益性や効率性を管理できます。
  • 調達管理・在庫・資材オーダー制御:資材の請求や交換時には、承認後に自動発注が行われ、無駄な支出を抑制。資材到着タイミングや在庫も一元管理します。
  • マルチトレード/機材追跡:空調制御・電気・配管など複数トレードの工数や収益を個別管理。機器ごとの使用状況もトラッキングされ、効率的な現場オペレーションを後押しします。

料金モデルは人員数や機能利用に応じた年契約制の従量課金で、価格は非公開です。

活用事例

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アリゾナ州の商業用空調制御・配管工事企業BP Mechanical LLC(ビーピーメカニカル)は、2年で従業員が12名から65名へと急増。業務の拡大に伴い、現場とバックオフィスの連携に遅れが生じ、稼働時間や購買状況の把握、請求処理に問題が発生していました。

そこでBuildOpsを導入することで、稼働時間や経費のリアルタイム追跡を開始。従来1週間以上かかっていたタイムカードの集計が即時化され、月次の業務負担を削減。さらにモバイル端末での購買・変更発注機能により、現場の自律性を保ちながらもコスト管理の透明性が向上しました。図面やドキュメント共有機能により設計変更の伝達ミスも減少したということです。

同社CFOのBrent Larson(ブレント ラーソン)氏は「現場リーダーのストレス軽減と事務負荷の平準化が実現し、安定的な成長が可能になった」と評価しています。

まとめ

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いかがでしたか?今回は建設現場管理ソリューションのBuildOpsをご紹介しました。同社は2018年にカリフォルニア州サンタモニカで創業され、専門工事業者向けの建設調達管理SaaSとして急成長を遂げています。

特にAIを活用した自動スケジューリング、予測メンテナンス、リアルタイム追跡などは、現場業務の生産性を飛躍的に向上させ、J.H. KellyやService Logicなど大手企業でも導入が進んでいます。今後は、API連携やIoT対応を拡張し、さらなる機能強化と海外展開にも力を入れていく方針です。

BuildOpsは、これまで後回しにされがちだった専門工事業界において、DXとAIを軸とした業務革新をリードする存在として注目されます。今後の展開が注目されます。