- 全世界の建設機械レンタル市場は約1,349億ドル(2024年)から1,709億ドル(2029年)へと、今後5年で年平均4.85%の成長が見込まれている
- アメリカのBigRenzは、建機レンタル市場のオンラインプラットフォームを展開
- 現在までに6,000件の建機レンタル・サプライヤー、14,000件のレンタルヤードのネットワークを構築している
はじめに
建設産業は市場動向に左右されやすい産業の一つです。そこで建設機械の初期投資や維持費を抑制できる建設機械レンタルサービスが登場してきました。世界のレンタル建設機械市場は2024年時点で1,348億8,000万ドル(約20兆2400億円)であり、2029年には1,709億2,000万ドル(約25兆6500億円)へと、年平均にして4.85%で成長していくことが予測されています(Mordor Intelligence 2024)。特に北米においてインフラ関連投資を促進する法案が成立したこと、またアジア・アフリカ地域新興国におけるインフラ需要が増大していることが、成長促進要因となっています。
しかし建機レンタルサービスはIT化が進まず、市場需要を掴みきれずレンタル建機を待機させてしまう、待機フリート問題を抱えてきました。そこで本記事ではレンタル建設機械業界のIT化を推進するBigRenz, Inc.(ビッグレンツ)をご紹介します。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
BigRenzとは?
BigRenzは2015年にアメリカ・カリフォルニア州アーバインにて創業された、レンタル建設機械のオンラインプラットフォームの開発企業です。オンライン化が課題となっている北米の建設機械レンタル業界にて、ビッグデータを活用したソリューションの開発を進めています。
BigRenzのビジネスモデルは、アメリカ国内の既存の建機レンタル企業と提携し、建機レンタル企業所有のレンタル建機をオンラインプラットフォームにて掲載、予約、利用管理を行い、その中間マージンを得るというものです。2024年2月にアメリカ国内の提携建機レンタル・サプライヤーが6,000件を、提携レンタルヤードが14,000件を突破。アメリカ国内人口の9割が自動車で30分圏内にアクセスできる範囲に、BigRenzと提携する建機レンタルネットワークを構築しています。レンタル料の総流通額は500億ドル(約7兆5000億円)にのぼります。
同社は2020年4月に日本の伊藤忠商事と資本業務提携を締結し、1500万ドル(約22億5000億円)の資金調達を実施。累計調達額を3110万ドル(約46億6700万円)としました。このパートナーシップを通じて、建設機械ビジネスにおいて、ビックデータやIoT、両社のネットワークを活用した市場拡大や製品改善を目指すとしています。
その一月前の2020年3月には、リフト・サービスに特化し、米国、プエルトリコ、メキシコ、カナダで機器のレンタルを行うLizzy Lift(リジー・リフト)の買収を発表。同社が所有するリフト建機を自社サービスに組み入れるとともに、北米市場の開拓進めています。
また2024年度には、マルチサイト施設管理のConnexFM(コネックスエフエム)との戦略的パートナーシップを発表しました。ConnexFMは顧客会員に対するロイヤリティプログラム、The BIG Rewards Club(ビッグ・リワーズ・クラブ)において、福利厚生の一貫としてアメリカ国内の顧客向け施設のレンタル料を割引するサービスを提供しています。BigRenzはこの戦略的パートナーシップを通じて、建機レンタル顧客に対する福利サービスを充実させました。
同社は2024年8月に、「2024年度 アメリカ合衆国西部の建設機械・技術プラットフォーム部門における最優秀賞」を獲得しています。
ビッグデータ及びネットワーク活用により競争力のあるレンタル価格を維持
BigRenzの建設業者向けサービス、BigRenz+(ビッグレンツプラス)は、建設現場の近郊にあるレンタル・サプライヤーの検索、予約、履歴管理を行うことができるプラットフォームです。建設業者は現場近くのレンタル・サプライヤーを市場価格に基づく適正価格で探すことができるので、必要な時に必要に応じて建設機械をレンタルすることができます。
BigRenzのサービスの強みは、膨大なビッグデータを活用したレンタル料金のダイナミック・プライシング(変動価格制)にあります。同社は建機レンタル企業と常にレンタル価格を交渉します。その価格は常に市場の需要予測に応じて競争的力が維持されるように計算されており、またこの価格に見合うよう、BigRenzは常に検索上位にリスティングされるようなSEO対策を行っています。
さらにBigRenzは6,000サプライヤー、14,000レンタルヤードにも及ぶ建機レンタルネットワークは、輸送コストの削減にもつながっています。そもそも建設機械のレンタル・コストの40%近くは、現場への機器の輸送に関連します。そこで建機をレンタルする業者やサービス・プロバイダーにとって、近場で顧客やサービス・プロバイダーを見つけることが非常に重要となります。また建設コストの35%は、建設業者が建機や労働力、資材を調達するために費やされます。建設業者はBigRentzを利用することで、建機調達にかかるコストを15~20%節約することができます。
最近では、Contech Magでも紹介した建設ファイナンスサービスBilld(ビルド)とも提携。Billdは、建設業者が手元の資金不足により調達遅れを発生させるのを防ぐため、建設資金の最長4ヶ月後払いサービスを提供しています。BigRenzはBilldの金融ソリューションと提携することで、手元資金に課題のある建設業者においても、建機レンタルサービスを活用できるようにしているのです。
総合建設調達プラットフォームを目指す
2024年2月のインタビューにおいて、BigRenz社CEOのScott Cannon(スコット・キャノン)氏は、BigRenzを総合的な建設調達プラットフォームへと展開していくことを目指すと述べています。
建設現場における大きな課題の一つは、資金、建機、そのオペレーター、職人、資材の調達です。具体的な社名は明かしていないものの、BIgRenzは現在、建設現場への人材派遣を行う企業との提携を進め、BigRenzのプラットフォーム上で顧客の建設業者に紹介できるように準備を進めているといいます。このように建機から労働力にいたるまで、建設現場で必要な調達の全てを一つのオンラインプラットフォームで行えるようにすること、これが今後のBigRenzの目指している方向であるとしています。
まとめ
いかがでしたか?今回は建機のオンラインレンタルプラットフォームを展開するBigRenzをご紹介しました。BigRenzは6,000社の建機レンタル・サプライヤー、14,000のレンタルヤードのネットワークを構築し、またビッグデータを活用したダイナミック・プライシングを導入することにより、顧客に対し競争的なレンタル価格の提案を可能とました。また今後は、建機に限らない総合建設調達プラットフォームを目指していくとしています。同社の今後の展開が注目されます。