- 建設産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)において、AI(人工知能)活用が進んでいる
- アメリカのBluebeam(ブルービーム)は建設DXソリューションで建設産業のペーパーレス化・デジタル化を牽引
- 2024年にAI機能強化のための共創ワークスペースBluebeam Labs(ラブス)をリリース
はじめに
建設産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)において、建設管理ソフトウェアは鍵を握っています。最新動向として注目すべきは、AI(人工知能)技術の飛躍的向上です。これまでもPDFやクラウドの活用を通じたデジタル化、ペーパーレス化が進んできましたが、最近ではスケジューリング、設計の法令遵守、建設物の運営効率化、データセット解析、品質保証、コスト見積もりや契約書作成などのタスク支援に、AIが活用されつつあります(注1)。こうしたAI技術の進展の後押しを受けて、建設管理ソフトウェア市場は2024年時点で97.4億USドルと評価され、2029年までに152億USドルへと、年平均9.33%で成長する見込みです(注2)。
今回は、建設管理ソフトウェア市場における老舗プロバイダー、米Bluebeam, Inc.(ブルービーム)におけるAI機能強化の事例をご紹介します。詳しく見ていきましょう。
注1)construction & civil engineering magazine, “Construction technology trends for 2024”
注2)Mordor Intelligence, “Construction Software Market Size – Industry Report on Share, Growth Trends & Forecasts Analysis (2024 – 2029)”
Bluebeamとは?
Bluebeamは2002年にカリフォルニア州パサデナで創業された、「建築・エンジニアリング・建設」(AEC)業界向けDXソリューションを提供する企業です。2014年10月にドイツのNemetschek Group(ネメチェック・グループ)に加わり、世界中の建築、エンジニアリング、建設、オペレーションの専門家とのつながりを強化。当時の買収額は1億USドル(当時レートで約110億円)でした。創業以来、PDFの作成、編集、マークアップ、コラボレーション、共有のためのツール設計に特化し、建設産業のペーパーレス化を牽引しています。
Bluebeamの主なターゲットは以下の通り。
- 主に建築家:設計レビューの迅速化や設計品質の向上
- 総合建設事業者・施工業者:プロジェクトのライフサイクル全体でのコミュニケーション標準化や、データインサイトの獲得
- 公共部門:測定、ドキュメント管理、レビューの速度・精度の向上
これまでに全世界160カ国300万人以上、350,000社以上の企業に採用され、これには米国の主要建設業者の99%、主要設計事務所の86%が含まれています。本社(パサデナ)のほか、支社をブリスベン(オーストラリア)、コペンハーゲン(デンマーク)、ダラス(アメリカ)、ロンドン(イギリス)、ミュンヘン(ドイツ)、キスタ(スウェーデン)に展開しています。
建設DXソリューション、Bluebeam Revu(レビュー)
Bluebeamはこれまで、「建築・エンジニアリング・建設」(AEC)業界向けDXソリューション、「Bluebeam Revu(レビュー)」を展開してきました。Revuは、PDFの作成、編集、マークアップ、コラボレーションのためのソフトウェアで、クラウドを活用することで、リアルタイムでの関係者(施工者・管理者)間の情報共有をサポートします。
日本市場ではパナソニック・コネクト株式会社を介して提供されています。すでに大林組、日建設計、日揮グローバルなどの導入事例が紹介されており、ウェブサイトからは製品をダウンロードしたり、30日間の無料トライアルを利用することができます。
また利用にあたりBluebeam University(ユニバーシティ)を通じて無料のトレーニングコースが提供されており、チームでの導入をサポートします。料金体系はサブスクリプションとなっており、ユーザーあたり¥24,000/年から¥60,000/年まで、機能別にベーシック、コア、コンプリート・プランの3プランが用意されています。
AI活用を促進する共創ワークスペース、Bluebeam Labs(ラブス)
Bluebeamは過去10年以上にわたって、主力製品であるBluebeam RevuにてAIに投資を続けてきました。初期に導入された機能として、以下のものがあります。
- OCR(光学文字認識):スキャンしたPDFをテキスト検索可能かつ選択可能なファイルに変換する機能。
- ビジュアルサーチ:図面内の特定の画像を自動的に識別し、カウントする機能。
- ダイナミック・フィル:不規則な形状を自動的に塗りつぶし、周囲、面積、体積などの複雑な測定を迅速に行う機能。
それに加えて2024年1月には、既存技術の向上をさらに促進するための共創ワークスペース「Bluebeam Labs」のリリースを発表しました。これは、ユーザーが新しいAI機能の開発に早期に参加できるプログラムであり、ユーザーのフィードバックに基いて機能向上を進めるために提供されているものです。注力している機能として、次のものが挙げられます。
- オート・アライン:図面の位置合わせを簡略化する機能で、従来の手動による3点位置合わせの手間を省き、図面の違いを迅速に把握する。
- タイトルブロック認識:AIを活用して、図面のタイトルブロックから重要な情報をメタデータとして自動抽出する機能を提供予定。
- 3D ドローイング:AIを活用して、数百枚の2D図面を3D空間に自動配置します。これにより、プロジェクトの視覚化が新しい次元で可能に。
まとめ
- いかがでしたか?今回は建設DXソリューションの老舗企業である米BluebeamにおけるAI(人工知能)機能強化の事例をご紹介しました。これまでのソリューションにおけるペーパーレス化・デジタル化をベースに、AIを用いた付加価値の向上を目指しています。同社の今後の動向が注目されます。