自律移動ロボットが建設図面を現場に書き出すDusty Robotics

画像引用元:Dusty Robotics公式ホームページ
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  • 自律移動ロボット市場は2024年度から2029年度までに年平均15.6%もの急成長が予測される
  • Dusty Roboticsは自律移動ロボットによる建設図面の現場への墨出しソリューションを展開している
  • 同社ソリューションは3階建医療センターの建設プロジェクトにて、300万ドルコストを削減、3ヶ月の計画前倒しに貢献

はじめに

画像引用元:Dusty Robotics公式ホームページ

自律移動ロボット(Auto Mobile Robot; AMR)は、サービス業界などにおいて、人材不足対応のためいち早く普及してきました。レストランでの配膳や公共施設の掃除などで活躍している姿を目にしたことがある方も多いでしょう。AMRとは具体的に、一地点に固定されず、自由に移動できること、路面や障害物など使用環境に応じて自律的な判断ができること、といった特徴を持つロボットのことを指します。

近年AMRは建設産業を含む様々な産業で市場を広げており、AMR市場は2024年度の38億8000万ドルから、2029年度の80億200万ドルまで、年平均15.6%もの急成長が予測されています(注)。そこで今回は建設産業で活躍するAMRサービスの開発・運営を行っている、Dusty Robotics, Inc.(ダスティロボティクス)をご紹介します。一体どのような企業なのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

注)https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/autonomous-mobile-robot-market

Dusty Roboticsとは?

Dusty Roboticsは2018年にアメリカのシリコンバレーにて創業した、建設現場での墨出しソリューション、FieldPrinter(フィールドプリンター)を開発・運営する会社です。2022年5月にシリーズBで4500万ドル(約66億9200万円)を調達。累計調達額を6870万ドル(102億1700万円)としました。主要な調達元として、カリフォルニア州のScale Venture Partnersを筆頭に、シリーズAからの引受先となっているCanaan Partners、メリーランド州のNextGen Venture Partners、電気配管空調設備を中心とした建設産業を得意とするWND Venturesz、旧ツイッターの初期株主として知られるBaseline Ventures、製造・建設業特化VCのGRIDS Capital、シリコンバレーのシードVCのRoot Ventures、同じくシリコンバレーVCのCantosが名を連ねています。

Dusty RoboticsのソリューションはBIM to Field(BIMから現場へ)と呼ばれます。BIMによって書き起こされた建設図面をそのまま現場へと反映させるための、墨出し工程を効率化します。その中核となるのがFieldPrintプラットフォームで、設計から施工に至るまでの全プロセスを包括的に行います。第2世代の自律移動ロボットであるFieldPrinter 2(フィールドプリンター2)、BIMモデルからロボット用の図面を自動生成するRevitプラグイン、そして複数の業者が図面を共有・調整できるウェブプラットフォームであるDustyポータルが、このプラットフォームの主要な構成要素となっています。

複数の業種の図面を一度に床面に印刷できるマルチトレードレイアウト機能

画像引用元:Dusty Robotics公式ホームページ

Field Printプラットフォームの特徴の一つは、複数の業種の図面を一度に床面に印刷できるマルチトレードレイアウト機能です。これは作業の重複を避け、業者間のコミュニケーションを大幅に改善することができます。さらに、FieldPrinterは1/16インチ(0.16cm)という高い精度でレイアウトを印刷し、BIMモデルと現場の一致を保証します。この高精度な作業により、従来の手作業によるレイアウトと比較して約10倍の速さで作業を完了できるため、作業時間の大幅な短縮が可能となります。

また、すべての業者が同じ情報に基づいて作業することで、施工ミスのリスクを大きく減少させることができます。これは単にミスを減らすだけでなく、プロジェクト全体のスケジュールを短縮することにもつながります。実際に、レイアウト作業の効率化により、施工開始を数週間早めることが可能になるケースも報告されています。

多国籍ゼネコンSkanskaによる医療センター建設プロジェクトの事例

画像引用元:Skanska公式ホームページ

多国籍ゼネコンとして知られるスウェーデンのSkanska(スカンスカ)は、2022年8月に、医療機関であるSamaritan Court Ambulatory Care and Surgery Centerの建設プロジェクトにおいて、Dusty RoboticsのFieldPrinterを活用しました。このビルは3階建て、広さ69,000平方フィートの医療オフィスビルで、本プロジェクトはDusty Roboticsにとって、レイアウト戦略と責任についてすべての業界パートナー(機械、電気、配管、骨組み、乾式壁)と同時に協力した初めての事例であり、クライアントに約300万ドルのコスト削減をもたらしながら、スケジュールを約3カ月前倒ししてプロジェクトを完了しました。

Skanskaの主導による統合建設図面はDusty Roboticsにアップロードされ、そこで処理された図面が床に印刷されました。この技術を通じて現場における意思疎通が改善され、設計と施工の整合性が向上し、手作業によるエラーのリスクが低減されました。

まとめ

画像引用元:Dusty Robotics公式ホームページ

Dusty RoboticsのFieldPrintプラットフォームは、設計段階から現場へとシームレスにデータを反映し、高い精度、コミュニケーションを実現。建設プロセス全体を効率化するアプローチを提供しています。同社は今後どのように展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。また、同様のソリューションを提供する企業として、ContechではこれまでMechasysなどをご紹介してきました。同企業は自律移動ロボットではなくレーザーを活用した墨出しソリューションを提供しています。こちらも合わせてご覧ください。