画像引用元:Fieldlens Product Overview(https://youtu.be/uHOvXBVyF5Q)
- 建設プロジェクトのプロジェクトマネジメントソフトウェアを提供するFieldlens
- 事業者間のコミュニケーションとタスク管理を一元化し、工期を25%削減した例も
- 商業ビルのリノベーションにおける効果が評価され、2017年”WeWork”に買収された
はじめに
建設プロジェクトのタスク管理は非常に複雑です。一つの工事には建方、壁、屋根、水道、電気、左官など、さまざまな専門業者が携わります。また、建設プロジェクトは現場によって土地の形状や面積、建築物、遵守すべき法律が異なるため、標準化や仕組み化が困難とされています。
プロジェクトに対し関わる人数が多く、また、現場が多様であるにも関わらず、作業工程でのIT化が進まず、未だに関係者間のコミュニケーションはFaxやメールが中心です。このように、関係者間の情報共有の煩雑さが、建設作業を非効率にする要因の一つとなっているのです。
こういったコミュニケーションの煩雑さを解消するソフトウェアを提供するのが、今回ご紹介するFieldlens, Inc.(以下Fieldlens)です。
Fieldlensとは?
Fieldlens(フィールドレンズ)は、「建築をより効率的で生産的にする」というミッションを掲げ、2011年アメリカで創業されました。
スマホアプリおよびウェブアプリを通じてクラウドに情報を集積し、専門業者間のコミュニケーションとタスク管理を一元管理することができるプロジェクトマネジメントソフトウェアを提供しています。
コワーキングオフィス事業のWeWorkによる買収もあり、注目を集めているスタートアップです。
クラウドでタスクマネジメント、関係者全員が参加できる
画像引用元:Fieldlens公式サイト
Fieldlensはモバイルアプリ、およびWebアプリを提供しており、これらを通じて一つのプロジェクトに関係する全ての人が個々の作業状況の確認、進捗の共有、タスクの管理をできるようにしました。
これまでの建設プロジェクトでは多様な専門業者間の折衝のために、「こちらのドキュメントはクライアントに見せられるが他の協力企業には見せられない」といったこともあり、閲覧権限の管理が難しいWebの利用は普及しませんでした。
Fieldlensは作業責任者による細かい管理権限、閲覧権限の設定を実装し、この「専門業者間のコミュニケーション」での閲覧権限管理の煩雑さを解消、全ての関係者をクラウド上で一元管理することを可能にしました。
作業者に配慮したモバイルアプリのUX
画像引用元:Fieldlens公式サイト
現場での作業者は作業状況を画像やテキスト、動画を通じてクラウドに送信し、情報を共有することができます。また、個々の作業の納期や責任者の設定もアプリ上で行うことができるため、計画の修正も瞬時に共有することができます。
電話やテキスト、メールを通じて行われるコミュニケーションをクラウドで一元化することで、無駄な作業を減らし、工期を削減することが可能です。
他社ツールとの機能の違いは?
市場ではクラウドの進化に伴い、プロジェクト管理ツールが増加しています。どのツールを導入すべきか悩む人に向け、比較サイトが開設されるほどになりました。ContechMagでも、PlanGridというツールを以前ご紹介しています。
記事を読む:世界的CADメーカーAutodeskが買収! PlanGridが目指す建設現場におけるクラウド化
ここで、このPlanGridとFieldlensにどのような機能の差があるのか比較してみましょう。
サービス比較
Fieldlens、およびPlanGridは両者ともにモバイルアプリ、およびWebアプリを提供しています。また、どちらのサービスも主要機能として以下のものを実装しています。
・作業工程の可視化、共有機能
・問題点の共有機能
・ドキュメント、画像の共有機能
・タスク管理機能
一方、Fieldlensのみに実装されている機能として以下のものがあります。
・契約関係のマネジメント機能
・情報提出依頼機能
また、PlangridはGoogle DriveやDropboxなどの連携アプリが充実しており、ファイルや画像の管理に優れていることが特徴して挙げられます。
こういった点から、PlanGridでは作業者間のコミュニケーションや、ワークフローの改善に焦点を当てているのに対して、Fieldlensはプロジェクトのマネジメントや、現場の作業者とオフィスワーカー間のコミュニケーション効率化に焦点を当てていることが分かります。
Fieldlensの導入事例とその効果
テキサス州ダラスに本社を置く”Balfour Beauty Constraction”は、建設プロジェクトの現場の安全性を高めるために現場の安全管理状況を調査することを決定し、毎週各建設プロジェクトの現場の状況画像を、本社の指令のもとで収集していました。
ここでBalfour社はこの調査プロジェクトのために調査チームを組織し派遣するのではなく、Fieldlensを導入しました。これにより現場にいる作業者が安全管理状況を画像にして送信できるようになったため、より短時間に情報を集められるようになりました。
調査プロジェクトにFieldlensを導入したことにより、これまでの調査方法に比べ700%の情報量を集めることに成功し、これまで以上にリアルタイムで、安全性に関する問題を本社と共有することが可能となりました。
WeWorkとの相乗効果は?
画像引用元:Fieldlens/Fieldlens is Being Acquired by WeWork
Fieldlensは2017年6月に、コワーキングオフィス事業のWeWork(ウィーワーク/ウィワーク)に買収されました。
WeWorkは、専門家や中小企業向けに共同オフィスとワークスペースを提供する不動産開発企業。2018年の日本進出後、一気に4都市33拠点を開業(2019年9月時点)しました。2019年度だけで見ると、1ヶ月に2拠点という非常にハイスピードで開業を進めていることになります。
WeWorkはFieldLensを早期に採用し、多くの建設プロジェクトでデータを共有するために使用しています。建設現場でのコミュニケーションを効率化するためだけであれば、これまでのようにソフトウェアを利用するだけで十分ですが、なぜWeWorkはFieldlensを買収したのでしょうか?
その答えとして、WeWork社の製品システムおよびオペレーション担当副社長Aaron Fritsc氏は次のように述べています。
We see FieldLens as the communication layer on top of everything that happens around getting a building built.
「我々はFieldlensを、建物を建てる際に起こるあらゆる事象において基礎となる、コミュニケーション方式であると捉えている。」
参照記事: Builtworlds/The real story behind WeWork’s acquisition of FieldLens
WeWork社は将来的に建物のライフサイクル全体に関係する事業を展開することを表明しています。そこで、Fieldlensを単に建設現場における効率化ツールとして捉えるのではなく、長期的にはスペースの調達、設計、管理、および運用にまで利用でき、建設プロジェクトの全てのプロセスで作業を効率化するプラットフォームへと進化させていくとの考えを示しています。
まとめ
建設現場におけるコミュニケーションを、ソフトウェアを通じて効率化する流れは今後も加速していくでしょう。FieldlensのプラットフォームがWeWorkとのタッグでどのような進化をしていくのか、今後の動向に注目です。