建設安全管理ソリューションを展開するHammerTech

画像引用元:HammerTech公式ホームページ
海外事例
  • 建設安全管理ソリューション市場は、2023年時点で31億ドル(約4450億円)のところ、2032年までに61億ドル(約約8700億円)へと年平均7%で成長見込み
  • 建設安全管理ソリューションを展開するオーストラリア発スタートアップのHammerTechは、現場管理に必要なモジュールを網羅。AI活用の分析・レポーティング機能を提供
  • HammerTechは2024年に7000万ドル(約100億5000万円)を調達。世界市場への展開をすすめる

はじめに

The Wall Street Journal, 2023, “活況の米建設業界、不足する労働者”

全世界における建設安全管理市場は、2023年度時点で31億ドル(約4450億円)で、2032年までに61億ドル(約87億6000万円)へと年平均7%での成長が見込まれています(Global Market Insight 2024)。この数値には、個人が着用する保護装置のほか、落下防止装置、環境(ガス・粉塵・騒音)監視システム、安全点検・許可証やライセンス等の書類管理ソリューションといった製品が含まれます。

例えばアメリカでは、政府が拠出するインフラ投資により建設市場が拡大する一方、熟練労働者や管理者の不足から建設労働者の安全・衛生管理コストが上昇しており、建設安全管理ソリューションが注目されています。

そこで今回ご紹介するのは、建設現場の安全管理ソリューションを提供するHammerTech(ハマーテック)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

HammerTechとは?

HammerTechは2013年にオーストラリア・メルボルンにて創業された、建設安全管理ソリューションを展開する企業です。オーストラリアでは建設会社トップ100社のうち85社で採用されており、現在イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランドに展開しています。同社製品は全世界で500以上の顧客に利用されており、すでに20,000件以上の建設プロジェクトで採用、延べ人数450万人以上の労働者がプラットフォームに登録しています。

同社は2024年7月に、カリフォルニア州に拠点を置くRiverwood Capital(リバーウッドキャピタル)を筆頭株主として7000万ドル(約100億5000万円)の資金調達を実施。累計調達額を7710万ドル(約110億7000万円)としました。このラウンドには、既存株主でカリフォルニア州のファンドArrowroot Capital(アロールートキャピタル)が参画しています。

建設安全管理を網羅する2つの製品

画像引用元:HammerTech公式ホームページ

​HammerTechは「HammerTech GO(ハマーテック・ゴー)」と「HammerTech(ハマーテック)」の2つの製品を展開しています。​両製品は導入の柔軟性やカスタマイズ性、サポート体制において違いがあります。​

「HammerTech GO」は、迅速な導入を重視する企業向けのソリューションです。​事前に用意された安全管理用フォームやプロセス管理機能を利用することができ、最短2週間でのセットアップが可能です。​標準的なサポート(午前7時から午後7時)があり、コスト効率の高いソリューションとして設計されています。​

一方「HammerTech」は、より高度なカスタマイズを求める企業向けに設計されています。​安全フォームやプロセスを完全にカスタマイズでき、導入時には専門家による設定とサポートが提供されます。​カスタムSLA(サービスレベルアグリーメント)に基づくサポートや、柔軟利用が可能で、複雑なニーズに対応します。

両製品に共通するものとして、次の機能が備えられています。

建設現場管理

  • 安全検査
  • ジョブ・ハザード・アナリシス(危険分析機能)
  • バレットイン(緊急通知機能)
  • 日報
  • 安全情報チェックシート作成
  • 作業計画

許可書類管理

  • オリエンテーション機能
  • 請負業者管理
  • 建設機械管理
  • 建設人材管理
  • 事故・災害管理
  • 予約
  • ミーティング

以上の各機能がデータ連携をすることにより、業務効率を47%改善、書類許可日数を67%短縮することができます。

また、Hammertechのソリューションは主要サービスとの統合も可能。建設現場管理ソリューションのProcore(プロコア)Autodesk Construction Cloud® (オートデック・コンストラクション・クラウド)Kwant(クワント)、財務ソリューションのCMiC(シーミック)、建設人材管理ソリューションのIrongate(アイアンゲート)Eyrus(エイラス)、調達・購買管理ソリューションのAcumatica(アキュマティカ)といった製品とシームレスにデータ連携をすることができます。

HammerTechの導入事例

画像引用元:HammerTech公式ホームページ

2022年6月、​アメリカの建設会社DOC(ダニエル・オコンネル・サンズ)は、HammerTechとの提携を発表しました。同社は​HammerTechの導入により、従来の紙ベースの手続きから脱却し、請負業者のオンボーディングや事前作業計画、監査などを一元管理できるようになりました。​

特に利用されたのはインサイト機能です。​これにより、現場や経営陣はリアルタイムで安全データを把握でき、従来1時間以上かかっていた安全報告書の作成がわずか5分で可能になりました。​また、現場のトレーラーに設置されたモニターで、許可証や通達、配送状況などの重要情報を即座に確認できるようになり、安全意識の向上につながっています。​

さらに2024年10月、HammerTechは、北米を拠点とする大手建設会社PCL Construction(ピーシーエル・コンストラクション)との提携を発表しました。​このパートナーシップは、PCLの全世界の建設現場における安全性向上と業務効率化を目的としています。​

PCLは年間100億カナダドル以上の建設プロジェクトを手がけ、業界平均を下回る労働災害率を誇るなど、安全性と革新性に定評があります。​今回の提携により、HammerTechの建設安全管理ソリューションを導入し、4,000人以上の従業員や協力業者、最大5万人の現場作業員が、リアルタイムの安全報告やデータ管理機能を活用できるようになるといいます。​

まとめ

画像引用元:HammerTech公式ホームページ

いかがでしたか?今回は建設安全管理ソリューションを展開するオーストラリア企業HammerTechをご紹介しました。同社は建設安全管理のための豊富なモジュールを備えたソリューションを展開しつつ、機能面で競合する各社との統合機能も充実させています。また、企業別のカスタマイズがしやすい「HammerTech」と、簡単に導入できる「HammerTech Go」の2製品を展開することにより、市場拡大を目指しています。

同社は2024年7月に7000万ドル(約100億5000万円)の大型資金調達を発表しており、今後は製品機能向上とともに、国債市場への展開を進めていくものと思われます。同社の今後の動向が注目されます。