- Accessory Dwelling Units(ADU、付属居住ユニット)と呼ばれる「小さな家」が住宅供給不足のなかで注目されている
- 米国のSamara(サマラ)は、プレハブ型ADUの用地使用許可取得から建設までを垂直統合し、ワンストップで提供する
- SamaraのADU製品Backyard(バックヤード)は、広さの異なる3タイプを$289,000(約4270万円)から提供。民泊や、住居、スタジオなど幅広く活用できる
はじめに
米国は深刻な住宅供給不足に慢性的に悩まされています。そこでAccessory Dwelling Units(ADU、付属居住ユニット)と呼ばれる「小さな家」が注目されています。ADUとは、既存住宅の裏庭などに建設する500平方フィート(約50平方メートル)前後の建物のことを指し、マンションやアパートの1室のようなプライベートな空間を確保しつつ、費用対効果の高い木造軸組工法で建設されるため、新築の多世帯住宅よりもコストを抑えて建設することができます。カリフォルニア州では、2016年よりADU建設規制を緩和するための一連の法整備が進んできました。最近では2023年1月に高さ規制が大幅に緩和され、2階建てのADUの建設が可能に(注1)。ある地方シンクタンクの調査によれば、カリフォルニア州全体でADU150万戸の建設可能性があるとされています(注2)。また、500平方フィート以下の建物に絞ると規模感は下がるものの、2022年における世界全体での市場規模は42億ドル(約6400億円)で、2032年までに66億ドル(約9700億円)、年平均にして4.8%の成長が見込まれています。
そのような市場環境のもと、民泊のAirbnbの共同創業者Joe Gebbia(ジョー・ゲビア)氏がネットゼロの低環境負荷型ADUを提供するSamara Living Inc.(サマラ・リビング)をAirbnbからスピンオフさせました。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
注1)Symbium “What homeowners should know about California’s 2023 ADU laws”
注2)MarketResearch.Biz “Tiny Homes Market”
Airbnb発のADUスタートアップ Samaraとは?
Samaraは米国ニューヨークに拠点を置くADU建設のスタートアップです。元々は2016年に開始したAirbnbのR&D部門の一つがベースとなっており、2022年11月にAirbnbからスピンオフしてプロダクトの市場投入を進めています。2018年時点での情報によれば、Samaraは2019年には製品を市場投入する予定でしたが、実際にはコロナ禍を経た2022年11月の製品公開となりました。これまでの資金調達の情報はありません。Airbnbの創業者Joe Gebbia(ジョー・ゲビア)氏と、サプライチェーンソリューションのFlexのCEO、Mike McNamara(マイク・マクナマラ)両氏を共同創業者として事業を展開しています。
Samaraの展開するBackyard(バックヤード)は、3タイプからなります。最も小さいStudio(スタジオ)は420平方フィートで279,000ドルから。One Bedroom(ワン・ベッドルーム)は540平方フィートで299,000ドルから。Two Bedroom(トゥー・ベッドルームは690平方フィートで339,000ドルからとなっています。この価格には用地の使用許可取得や建設費用の全てが含まれます。
プレハブ方式を採用しているため現地での施工は基礎工事およびインストレーションのみ。見積もり開始から施工完了までの工期はおよそ7か月とスピーディです。
ネットゼロの低環境負荷住宅を実現したBackyard
Samaraが2022年11月に公開したADU製品Backyardは、住宅の庭に建設可能な発電ユニット付き住宅として発売されました。家族のためのスペースとして、新しいワークスペースやバンドの練習場所として、様々な用途に活用することができます。また価格279,000ドルからと、一般的に住宅価格が100万ドルを超えるカリフォルニア州においては十分な競争価格を持ちます。Backyardの強みは、ソーラーパネルによりネットゼロを実現できること。キッチンやバスルームなど、Backyardで活用する電力を自家発電で対応でき、余った電気は母屋に送電することが可能です。3タイプの間取り、外観は5つのカラー、2つの屋根、窓、ドアの位置についてカスタマイズができます。カスタマイズしたBackyardの3DイメージはSamaraのホームページで確認でき、建設場所による価格変化についても確認することができます。
外観はコンパクトながら、居住空間もしっかり確保しています。Backyardは照明、空調、配管や水道設備などの基本設備はもちろん、キッチン、バスルーム、ランドリーなど生活に必要な設備も標準完備。インストレーションのその日から自由度高く活用することができるようになっています。
ADUスタートアップが続々登場
サンフランシスコに拠点を置く住宅事業者Adobu(アドブ)は、2018年に創業したADU建設のスタートアップです。シリーズAまでに2350万ド(約35億円)を調達しており、340平方フィートから800平方フィートまでのより幅広いサイズでプレハブ形式のADUを展開しています。ロサンゼルス発のAzure Printed Homes(アジュア・プリンテッド・ホームズ)は再生プラスチックを3Dプリントする極小住宅を開発する企業です。これまでにシードラウンドで50万ドル(約7400万円)を調達しています。