不動産管理・投資業務をトータルサポートするYardi

画像引用元:Yardi Systems, Inc. 公式ホームページ
海外事例
  • 世界の不動産管理市場は2021年の151億ドルから2028年には約282億ドルへ、年平均成長率9.3%で拡大
  • 1984年創業のYardi Systems, Inc.は、不動産管理・投資業務をトータルでサポートする拡張性の高い製品群を提供
  • 2021年12月に商業用不動産マーケットプレイスの42Floors.com(42フロアズ ドットコム)を買収するなど、積極的M&Aで事業を拡大

はじめに

画像引用元:Yardi Systems, Inc. 公式ホームページ

世界の不動産管理市場は2021年の151億ドル(約1兆7500億円)から2028年には282億1000万ドル(約3兆2690億円)へ、年平均成長率9.3%で持続的に拡大していくと予測されています。これは2017年から2019年の年平均成長率8.3%を上回っており、その要因の一つとして新型コロナウイルス流行が不動産管理のデジタルシフトを加速していることが考えられます(注1)。

画像引用元:Fortune Business Insight

不動産管理市場のうち大きな割合を占めるのが不動産管理ソフトウェア市場です。これまで不動産所有者や家主は第三者の不動産管理エージェントを介して不動産管理を実施してきましたが、不動産管理ソフトウェアを導入することにより、設備の保守点検から、賃貸管理、顧客サービスなど、多岐に渡る不動産管理業務の効率化と、データ活用によるマーケティングや顧客サービスの最適化を通じてコスト抑制と利潤拡大を追求できるようになります。
今回ご紹介するYardi Systems, Inc.(ヤルディ システムズ、以下Yardi)は、1984年の創業以来40年近くに渡り不動産管理ソフトウェアの開発運営と、M&Aによる事業拡大を続けており、不動産管理・投資業務をトータルでサポートする拡張性の高い製品群を提供しています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

(注1) Fortune Business Insight “Property Management Market Size, Share & Covid-19 Impact Analysis, By Component (Software, Services), By Deployment (Cloud, On-Premises), By Application (Residential, Commercial), By End-User (Property Managers, Housing Associations, Real Estate Agents, and Others) and Regional Forecast, 2021-2028

不動産管理ソフトの老舗 Yardiとは

画像引用元:Yardi Systems, Inc. 公式ホームページ

Yardiは1984年創業の不動産管理ソフトウェア企業です。アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタバーバラに拠点を置き、現在北米、ヨーロッパ、中東、アジア、オーストラリアの45カ所以上のオフィスで、7,500人以上の社員を擁しています。2021年12月に商業用不動産マーケットプレイスの42Floors.com(42フロアズ ドットコム)を買収するなど、過去に16件のM&Aを実施しており、創業以来資金調達を行わずに事業拡大、グローバル展開を進めています。

Yardiは投資運用会社、住宅プロジェクト会社、不動産管理会社、建設管理会社などを顧客として、管理ソフトウェアとクライアントサポートサービスを提供しています。

不動産管理のデジタル化支援サービスを提供している企業としては、本サイトでもご紹介しているEntrataやSAP、Oracleなどがありますが、これらの企業が提供しているのは顧客ごとにアプリケーションの開発が必要なIaaS, PaaSといった製品です。これらの製品は顧客ごとに開発を必要とするため、顧客状況に合わせて機能を最適化することができますが、導入にコストと時間がかかります。一方でYardiの製品はソフトウェア機能をインターネット経由で販売するSaaSであり、市場データのリサーチから支払い機能、CRM(顧客関係管理)など様々な機能をすぐに利用することができます。これにより導入のコストや時間を抑制しつつ、同社はSaaSの欠点である拡張性に関しても多彩な製品のラインナップでカバーしています。

拡張性能の高いプラットフォームYardi Voyager

画像引用元:Yardi Systems, Inc. 公式ホームページ

Yardiの主要製品の一つYardi Voyager(ボイジャー)は、財務情報と不動産管理情報を単一の集中データベースに統合したエンドツーエンド・プラットフォームで、Webやモバイルで利用できます。大規模なポートフォリオの運営管理、賃貸管理、居住者、テナント、投資家向けサービスなど、不動産の種類や必要なサービスに合わせて複数のモバイルアプリを選び、統合して利用することができます。

例えばMulti Family Suites(多世帯住宅向け製品)としては、不動産管理、マーケティング・リーシング、CRM(顧客関係管理)、コールセンター、経理、居住者のスクリーニング、居住者向け保険、賃料管理、不動産の保守管理といった多様なモバイルアプリの製品群が提供されていますが、Yardi Voyagerをプラットフォームとして、これらをシームレスに利用することができ、不動産のオーナーはこれらの機能から必要な機能を選択することができます。

その他にも、商業用不動産、アフォーダブル住宅、高齢者住宅、学生住宅、空港・港湾、駐車場、軍事用不動産、倉庫・工場など、市場に合わせてカスタマイズされた製品群がラインナップされており、Yardi Voyagerはデータを統合し多様な機能をシームレスに利用することを可能にするプラットフォームとしての役割を果たしています。

ワークフロー簡素化に特化したシンプルなプラットフォームYardi Breeze

Yardiが2018年に公開したYardi Breeze(ブリーズ)はワークフローの「簡素化」に特化した、中小規模の不動産オーナー向けの不動産管理プラットフォームで、Voyagerと同様にWebやモバイルで利用できます。住宅用、商業用、倉庫、工場など、利用者の保有する不動産の種類に合わせてカスタマイズすることが可能です。

Breeze(そよ風)の名の通り、多岐に渡る不動産業務をそよ風のように心地よく簡単にすることが謳われており、不動産のリスティング、マーケティング、リード顧客の獲得、賃貸管理、CRM(顧客関係管理)など、様々な業務を一括で実施することができます。また、Yardi Breeze Premireという上位製品を選択すると、AIによるチャットボットの導入や経理やインボイスの発行自動化も可能です。

Yardi Breezeは1戸あたり月額1ドル、Yardi Breeze Premireは1戸あたり月額2ドル(いずれも最低契約価格は月100ドル)からとなっています。

類似サービスとの比較

画像引用元:AppFolio公式ホームページ

AppFolio(アップフォリオ)は2006年に創業された企業で、Yardiと同様にSaaSの不動産管理ソフトウェアを提供しています。2015年にNASDAQへの上場を果たしています。

AppFolioの主要ターゲットは中小規模の不動産投資家です。シンプルで使いやすいプラットフォームを求める顧客に対してユーザーフレンドリーなUX/UIの製品を提供しており、最低価格は、基本製品のProperty Manager(プロパティ マネージャー)は月額250ドルです。1戸あたりの月額使用料は、住宅と学生寮が1.25ドル、商業施設が1.50ドルで、最小ユニット数は商業施設ベースで167戸以上とされています。

また、AppFolioが大規模な住宅、商業施設、コミュニティ・アソシエーション、学生寮のポートフォリオ向けに提供しているAppFolio Plus(アップフォリオ プラス)は、月額最低利用料が1500ドルからとなっています。

同じくYardiが提供する中小規模の不動産投資家向け管理ソフトウェアYardi Breezeは、商業施設用と住宅用で価格が分かれています。住宅用のYardi Breezeは、100戸までは月額100ドル、100戸を超えると1戸ごとに月額1ドルずつ上乗せされる形となり、商業用では、100ユニットまでは月額200ドル、100ユニットを超えると1ユニットごとに月額1ドルです。

またYardiの主要製品であるYardi Voyagerは、運用管理、リースの実行、分析、会計のためのウェブベースのプラットフォームを必要とする大規模なポートフォリオに最適です。Yardi Voyagerの価格は、年間約10,000ドルからとなっています。

商業施設ベースで167戸未満のポートフォリオを検討する場合、Yardi Breezeが選択肢となり、1000戸以上のポートフォリオではYardi VoyagerとAppFolio Proを比較して前者が価格優位となります。

まとめ

いかがでしたか?今回は、不動産管理・投資業務をトータルでサポートするSaaSを提供するYardi Systems, Inc.をご紹介しました。Yardiは積極的なM&Aを通じて製品ラインナップの豊富化と市場拡大を続けています。新型コロナウイルス流行によるデジタルシフトが不動産管理ソフトウェア市場の追い風となる中、今後どのように事業を展開していくのでしょうか。今後の展開が注目されます。